4月25日は北朝鮮の正規軍・朝鮮人民革命軍の創設記念日。経済が逼迫しているはずの北朝鮮だが、金正恩氏は軍事偵察衛星の打ち上げを指示した。果たしてどんな衛星を打ち上げるのか。そして、それは何を意味するのか。
また、去年以来、金正恩氏が頻繁に連れ歩く娘の呼称が“愛するお子様”から“尊敬するお子様”に変わった。これは何を意味するのか。動きを活発化させる北朝鮮の現状を読み解いた。

衛星で軍人の階級章まで見えるものも…

北朝鮮が打ち上げようとしている軍事衛星とはいかなるものなのか。金正恩氏が現場視察した際に公開されたいくつかの写真から専門家は分析する。番組が話を聞いた専門家は元韓国軍の将校で、北朝鮮の軍事情勢分析の第一人者。彼は今回打ち上げるのは偵察衛星であり、攻撃対象の位置や状況を正確に把握することでミサイルの命中精度を高めるためのものだと語る。

北韓大学院大学 金東葉 教授
「4枚の太陽光パネル。2012年と2016年に打ち上げた衛星よりもはるかに大きくなったと推察する。重量は最低でも300キロ以上。全体的な重量、規模が大きくなった。(中略)軍事偵察衛星だとすれば一番大切なのはカメラ・・・」

キム教授が写真から読み解いた軍事偵察衛星の特徴はこうだ。
*四角形から六角形になり使える空間、電力量ともに増加。高性能な装置を搭載可能。
*昼用の光学カメラと、夜や雲に覆われていても撮影できるカメラ、2つのカメラを装備。

北韓大学院大学 金東葉 教授
「ひとつの軍事衛星でミサイルの正確性を高めることはできない。多くの軍事衛星を配置する必要がある。一発打ち上げられても慌てふためくことはないが、これが始まりということだ

北朝鮮の政治や外交に詳しい慶応大学の礒崎教授も軍事衛星の打ち上げは驚くことではないが、これが始まりに過ぎないと語る。

慶応大学 礒崎敦仁 教授
「2021年1月の朝鮮労働党大会で兵器開発の5か年計画に並べられたうちのひとつです。(中略)これは1号機に過ぎないわけで、これを続けていくことも明言している。“目”が必要だということです、実際にミサイルを使うためには…」

攻撃のための“目”として衛星の打ち上げを急ぐ金正恩氏。これはアメリカや韓国とのバランスだというのは共同通信の平井久志氏だ。

共同通信社 平井久志 客員論説委員
「北朝鮮はこれまでアメリカの軍事衛星に細かい情報を全部取られていたわけですよ。北朝鮮自身は韓国の情報や軍事的な動きを自分たちだけ把握できない状態が続いていた。この不均衡な状態を打開したいんです」

今回の軍事衛星は規模も性能も従来打ち上げた衛星とは比べものにならないというのが専門家の見方だが、元防衛大臣の森本敏氏はアメリカなどの偵察衛星と比べるとまだまだ雲泥の差があるという。

元防衛大臣 森本敏氏
「偵察衛星というのはカメラの解像度がまず大事なんです。報道によると(北朝鮮の衛星の)解像度は20メートルとかで、これじゃ話にならない。どれくらいの解像度があるかは極めて高度な極秘情報なんですが、最も進んでる偵察衛星のカメラの解像度は5センチとか10センチなんです。宇宙から見て20~30メートルの解像度だと空母か普通の艦艇かがわかる程度。最も進んでるのは(宇宙から地上にいる)軍人の階級章が見えると言われる。それくらいの解像度でないと本当の意味でのピンポイントで目標をターゲッティングできない。北朝鮮はまだまだそんなとこまで行ってない。ほんの第一段階です」

だが北朝鮮は本気のようなので、近い将来西側の技術に追いついてくるかもしれない。
そうした近未来の話となれば、北朝鮮に関して常に憶測が飛ぶのは後継者問題だ。それと関係があるのか否かは不明だが、このところ一人の少女が注目されている。