公演当日、夜8時の開演に向けて、まだ空の明るい夕方から準備が進みます。

今回のメンバーは、演出・脚本の前田さんのほかに役者が3人と裏方1人。

これまで野外公演では、燃料で動かす発電機を使ってきましたが、今回の公演には、違った面白さを感じることもあるようです。

■照明担当 キムジイさん
「途中で(電力が)なくなって、役者さんが手で発電機を回しながら芝居を続けるということもあったりね。結構面白いよね、それが」

■役者 成田明加(なりた・あすか)さん
「“環境アート”をやりたいという気持ちが前に出ているわけではなくて、(出発点は)演劇をしたいという、ここにいられるためにはどうしたらいいんだろう、という感じですね。太陽光がたまる時間の速度とかお天気とかを体感して、得ていっているものが今、すごく多いので…」


満タンにしたバッテリーも、しっかりスタンバイ。
観客を迎え、いよいよ舞台が始まります。

演目は、雲の世界を旅する老夫婦を中心に、時空を超えて繰り広げられる「愛」と「情熱」の物語。


シェークスピアの「ロミオとジュリエット」をベースとしたオリジナル作品です。


登場したのは、電球で光る人形。
それぞれの小道具もケーブルを通じて、
あのバッテリーに繋がっています。

照明と音響に加えて、スモークやシャボン玉の演出も!
電源は限られても、もちろん、演出の手は抜きません。


公演もクライマックスに向かい、バッテリーの残りは30パーセントほど。


あたりは、すでに真っ暗です。

観客も、作品の世界に引き込まれていきます。そして…


この日は電池切れのハプニングもなく、ギリギリだという15パーセントほどを残して終演。

およそ1時間の公演は、無事に幕を閉じました。

■公演を見た人(埼玉から)「途中で切れたらどうするんだろうと思っていたので、それが面白いなと思って興味をひかれました」

■公演を見た人(埼玉から)「人間がコントロールできるみたいな万能感みたいなのを思ってしまっているところがあるところに、電気で(問題提起を)やっているのかなと思って、それは共感できるなと」

■公演を見た人(安曇野から)「(ゼロカーボンに挑戦してみる)そういう気持ちがすてきだと思いました。自分にできることを少し考えていけたらいいなと思います」

限られた電力で作り上げる、“約束されない”舞台。


松本市のあがたの森で4月末まで、「充電でき次第」の上演が続きます。