「家族構成まで知られた」 名札の“フルネーム”でトラブル

看護師の男性は、以前勤めていた病院で、恐怖を感じたといいます。

看護師(31歳)
「(名札を見て)患者さんがSNSで本名を調べて、出身地・家族構成の情報を他の人に話したりとか、そういったことがありました。女性なんかは、もっとあったりして、怖い思いしてるみたいなんですよね」

一方で、患者に対し名前を出さないことが最善なのか、葛藤もあると話します。

看護師(31歳)
「やっぱり、第一に大切にしたいのは、患者さんとの信頼関係を築くことなんですよ。その上で、自分の名前を名乗るっていうのは、大切なことだとは思うんですけど、その大切なことが悪用されると考えると、対策するのも、もしかしたら1つの方法として、ありなのかもしれないと思います」

接客業での“従業員の名札”について、利用する側はどう感じているのでしょうか?

50代
「なにか苦情があったり、すごく親切にしてくださったときに、名前がわからないとちょっと残念ですけど、いずれにせよ個人を特定するような情報じゃなくても、『良かったです』とか『嫌だった』ということを伝えれば十分だと思います

30代
「人それぞれ、ちゃんとモラルも持ってルールを守っていれば、そういうの(名札)も無くさなくても良い社会にはなるのかな、と思いますね。昔はそうではなかったから」

名札で誹謗中傷? 「客から迷惑行為」46.6%

小川彩佳キャスター:
「名札」とはちょっと違うかもしれませんけれども、例えばスーパーに買い物に行ったときに、卵だったり野菜に「生産者の顔写真と名前」が表記されているケースがあって、『ほっとできるな』『ありがたいな』という気持ちになったりですとか、名前が伝えられる安心感・温かみ、というのもあるとは思うんですけれども、そうとばかりは言っていられない時代。

山本恵里伽キャスター:
私も学生時代に、アルバイト先で名札をつけて働いていたことがあるんですけれども、7、8年前の話ではあるんですが、それでも「ちょっと怖いな」と思った瞬間は正直あるんです。なので、リスクが伴うことではあるのかな、というのは私は体感としてはあります。

こうした調査データもあるんです。

【交通関係の従業員の方に対するアンケート】
「直近2年以内に利用者などから迷惑行為の被害を受けた」・・・46.6%

半数近くの方が2年以内に利用者などからの迷惑行為を経験しているんですね。名札などを身につけているとSNSに投稿されたり、ネット上で誹謗中傷を受けることもある。こうした声も上がってるんですね。

小川キャスター:
厄介なのはネット上に載ってしまうと、“なかなか消すことができない”というところもありますよね。

名札“フルネーム義務”廃止 薬局では“苗字のみ”可に

山本キャスター:
ストーカー被害であったりカスタマーハラスメントの観点から、名札の対策に乗り出す動き、他にも出てきています。
その一つが薬局です。厚生労働省はこれまで薬局の薬剤師や従業員の名札についてフルネームで表示するように呼びかけていました。しかし2022年6月、「名字のみの表示でも差し支えない」という通知を出しました。ただ、現場では対応がわかれています。

▼スギ薬局:ひらがなの名字表記に変更
▼日本調剤:原則フルネーム表記を継続


小川キャスター:
現場も難しい、悩ましい判断なのかもしれないですね。

山本キャスター:
ただ、名札について街の方にお話を伺ってみると、いろんな声がありました。

営業職(20代)「お客様が名札を見て、サービスを褒めてくれると嬉しい」
就活生(20代)「名札があることによって、日頃から意識して気をつけて仕事ができるのではないか」

小川キャスター:
環境は確実に変わっていますから、それぞれの現場で照らし合わせて「本当にそのフルネーム表記などが必要なのか」というのを判断し直す必要もある、と感じます。

一方で、カスタマーハラスメントだったり、誹謗中傷がなければ、ここまで問題が大きくなっていなかったはずですから、“利用者側の節度”というのを改めて問われる時代ですね。