台湾世論は、総統選の歴史を見れば一目瞭然

関山健 京大准教授: マジョリティーは「両方いいとこ取りをしたい」というのが台湾世論のマジョリティーだと思います。これはもう1990年代からの台湾の総統選挙の歴史を見ると一目瞭然ですが、台湾経済というのは、中国との一体化がどんどん進んでいて、中国なくしては台湾の繁栄はないというのは事実なのですね。

 だからと言って、中国共産党に取り込まれたくないという気持ちも非常に強くあります。したがって1990年代以来、中国が台湾に対して圧力を強めると台湾は離れていく。逆に中国が台湾に対してそっけなくすると、台湾世論はもっと中国との関係強化をしたいと動く。これがまさに揺れ動く台湾世論の特徴だと思うんです。

―――馬英九氏はこの訪中の間に中国序列4位の王滬寧(おう・こねい)氏と会談するのではというふうに伝えられています。この王滬寧さんという人はどういう人物ですか。

 王氏は実は1970年代に日本で大学・大学院を卒業したといわれていまして、その後上海の名門大学で政治哲学を教えていた。私と同じような政治学者ですね。その後1990年代の末から中国共産党の仕事をするようになって、江沢民・胡錦濤、そして習近平と3代の総書記に政策ブレーンとして仕えたいわば中国共産党支配の理論武装の中心を担ってきた理論家です。しかも今は中国で序列の4位のところまで上ってきて台湾の統一工作の責任者でもあると言われています。

―――そうした人物と会談予定の馬氏、来年1月の総統選はどうなっていくのか。今後も注目です。関山さん、ありがとうございました。(2023年4月6日MBSテレビ「よんチャンTV」より) 

◎関山健氏(京都大学准教授 財務省・外務省で国際交渉などの政策実務を経験 東大・北京大・ハーバード大卒 専門は国際政治経済学)