嚥下食を提供する意義。創作料理のシェフに聞く

このサイトで紹介されている店のひとつ、新横浜にある「創作料理 Maison HANZOYA(メゾン ハンゾウヤ)」を訪問し、実際に嚥下食メニューを食べてみました。

同店の加藤英二シェフは10年ほど前から嚥下食の開発や啓発に取り組み、「嚥下食レストラン.jp」の監修もしています。

Maison HANZOYAでは50種類程度の嚥下食メニューの用意があり、嚥下障害のあるお客さんは、2週間にひと組程度来店するそうです。リピーターや、一度来たお客さんの紹介で来られる方もいるとのことでした。

いただいた料理は「サーモンのオイルバス」。低温の油で煮てクレソンや貝の出汁を使ったソースに浸したものですが、見た目は固形でも食べると口の中で溶けます。サーモンの味もしっかりあり、健常者が食べるコース料理と変わりないような、 とてもおいしい一品でした。

加藤シェフは、障害のある人と家族や付き添う方が同じ料理を食べ、味わうことに意義があるという考えで料理を提供しているそうです。加藤シェフは嚥下食について、このように語っています。

「創作料理 Maison HANZOYA」加藤英二シェフ
「もともと柔らかい状態とかで美味しいと言われる料理って、たくさんあるんですよ。それをぼくはちょっとアレンジしてっていう感じですね。嚥下障害のある方は、めちゃくちゃ集中して料理を食べてくれるんです。付き添いの方々もびっくりするぐらい、まあ見事に完食されて、めちゃめちゃ喜ばれるんですよ。介護士さん、ケアマネージャー、看護師さんなどが一緒にいらっしゃったりするんですけど、その方たちがいちばん驚きます。今までは背中叩いて『お母さん、食べてよ』みたいな感じなのが、言わなくてもがんがん食べて。『外食はもうできないと思ってた、でもこうやって店に来て食べることができて、本当に嬉しかった』と言われることも結構ありますね。『こういうふうな料理を作ってくれるレストランが、あまりないんです』といったご意見を言われる方もいます。障害のある人も健常者と同じ料理を食べて『美味しいな』という感覚を一緒に共有できる、料理ってそうあるべきだと思うんですよ」

「嚥下食」は比較的新しいジャンルなので、Maison HANZOYAのように料理としてレベルの高い嚥下食を提供できる飲食店は今はまだ少ないですが、障害のある方と家族などが一緒に食事できるレストランがあることをSNSなどから発信することで、「嚥下食」の認知度をあげ、対応できる店を増やしていきたいと加藤シェフや、「嚥下食レストラン.jp」のサイトを作った齋藤さんは言っていました。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC(ライター))