「人柄と“魅力”」直接使えた元秘書官が振り返る

劇中には、元総理の人柄を表すこんなシーンがあります。

親しかった人の葬儀と重要な審議会の日程が重なり、秘書官が審議会を優先した時のことでした。

オペラ「THE SPEECH」より

「ばかたれ!これが葬式じゃなくて結婚式だったら、君の言っていることはそれは正しいかもしれんよ。新郎新婦にあらためて会いに行って祝辞を言えばいいんだから。でもな、葬式は別だ。死んだ人間との最後の別れに、二度目はねえんだよ」

実は、当時の秘書官が舞台を見ていました。
元官僚で、3年5か月の間、秘書官を務めた小長啓一さん(92歳)です。
実際は、叱られたのではなくおだやかに、諭されたといいます。

【元秘書官 小長啓一さん】
偉くなっても『下から目線』ということですね。威張るような感じではなくて、相手の気持ちを察しながら対応していく。これは私は人間力の極致だと思うわけですけど」

先行きが不透明な今、元総理のような政治家がいたら…。
小長さんもそう感じています。

【元秘書官 小長啓一さん】
「構想力、決断力、実行力、人間力。その4つの要素をもった大リーダーであったというのを、劇を見るにあたって改めて実感しました」

田中元総理に入り込むたびに、演者もその魅力に引かれています。

【プロデューサー 吉武大地さん】
どうしてあんなに人を引き付けたんだろうっていうのが、すごく今回の舞台に込められているんですけど、人間性にすごく引かれますね」

【劇団★ポラリス 柿迫秀さん】
「僕は一人の男性として、家族を思ったというところにすごく引かれたんですよ。政治を目指すスタートは故郷を思って、家族を思った

田中元総理が愛した浪曲は「浪花節」とも呼ばれます。
「義理と人情にあふれた人だったのだ」と玉川太福さんは強く感じていました。

【浪曲師 玉川太福さん】
「それが嘘偽りじゃないからこそ、人を魅了して、この人についていきたいって心から思って、それは周りの一緒に働いている人たちだけじゃなくて、国民の人たちもこの人にはついていきたいと思わせる、人柄と魅力があったんじゃないかなと思いますね」

「田中型政治」には光も影もありましたが『政治家・田中角栄』は今もなお多くの人を魅了し、語り継がれています。

なおオペラ『THE SPEECH(ザ・スピーチ)』は、元総理の地元・新潟県(長岡市)でも、4月15日に上演されました。