全米屈指の豊かな漁場、アラスカ・ベーリング海のズワイガニ漁が初めて禁止されました。“災害”とも評されるほど深刻な被害が出ていますが、原因のひとつとして「海洋熱波」が指摘されています。
アラスカ州・コディアック島。カニやサーモンなどの漁業が盛んで、漁業生産量では全米トップ3を誇ります。
記者
「アラスカの海の沖合から漁を終えた船がいま、港に戻ってきました」
親子3代でズワイガニ漁を続けているプラウトさん。翌朝、彼の船を訪ねるとたくさんのカニが。タンクには1キロサイズのカニがぎっしり。その数およそ1万5000匹です。
しかし…
ズワイガニ漁師 ガブリエル・プラウトさん
「(収入は)85%ダウンです」
実はこのカニ、いつも獲っているズワイガニとは別のタナークラブという種類。
アメリカ政府などは、生息する個体数が漁獲可能な基準値を下回ったとして今季、ベーリング海でのズワイガニ漁を初めて禁止したのです。
ズワイガニ漁師 ガブリエル・プラウトさん
「こんなことは今まで一度もありませんでした」
禁漁による損失額はおよそ1350億円にも達し、アメリカ漁業史上最悪の規模になるおそれがあるとみられています。
何が起きているのでしょうか。
アメリカ海洋大気局・漁業生物学者 エリン・フェドゥワ研究員
「2019年から2021年にかけての調査で、100億匹のズワイガニがいなくなったことがわかりました。2018年と2019年に起きた『海洋熱波』が影響していることを如実に示しています」
原因として挙げられた「海洋熱波」。異常に高い海水温が5日以上続く現象で、ベーリング海では2018年に発生。ズワイガニの稚ガニが好む冷たい海水域が消滅し、個体数の激減につながった可能性が高いというのです。
「海洋熱波」は温暖化などによって日本を含む世界各地で発生しています。
ズワイガニ漁の最大拠点、セントポール島。多様な野生動物が生息し、「北のガラパゴス」と呼ばれる人口330人の島も、かつてない危機に直面しています。
記者
「漁港には船の姿がありません。静まりかえっています」
島の経済活動のおよそ9割がズワイガニ漁に関連。かつては多くの漁船の姿がありましたが、世界最大の加工工場も停止するなど禁漁で税収が減り、4人態勢だった警察官も1人しかいない状況だといいます。
代々、島で漁をしてきた先住民のリーダーは。
先住民 エイモス・フィレモノフさん
「今はゴーストタウンです。気候変動は自分が当事者になってみないとわからない。気づいたときには経済が成り立たなくなっていたのです」
海の恵みと暮らしを守っていくために何をすべきなのか。今、問われています。
注目の記事
子どもの命を守る「チャイルドシート」助手席に設置したら交通違反? → 適正に使用しない場合、事故死亡率に約4.7倍の差も【警察に確認してみると】

博多名物「ゴマサバ」提供やめる店も 寄生虫アニサキス急増 背景に”海水温の上昇””海流の変化”か

なぜそこで?「Uターンが相次ぐ市道」目の前に交差点があるのに…交通違反にはならないのか警察に聞いてみると

「ふるさと納税の返礼品に備蓄米」村長が認め さらに産地めぐる疑問が 熊本・西原村

福岡初のイスラム教徒へのヘイト街宣 1000年続く伝統祭礼「筥崎宮の放生会」を汚してまで…

快適な秋は短くすぐ冬に…?今年も「四季」→「二季」か 22日冬の長期予報発表前に予報資料から見える“サイン”とは tbc気象台
