「妹たちをそのまま迎えに行っていたら…」流された車と“偶然”

12年前の3月11日、宮世さんは(旧)浜市小学校で帰りの会の途中、激しい揺れに見舞われた。
そしてまもなく、母が車で迎えに来た。後部座席に宮世さんを乗せ、母の車は田んぼの間の道を走っていた。
宮世琉弥さん
「景色は覚えていますね。断片的に、そこのバッていう感じは覚えています」
「保育園にいる妹を、これから迎えに行くのかな」 宮世さんがそう思っていたとき、泥水が地を這うように迫ってきたという。
津波だった。
「母さんが車をUターンさせて走ったんですけど、やっぱり追いつかれちゃう」
「洪水みたいにきて、流されて」
水量を増した津波に、車ごと押し流されていく。

「当時の記憶がフラッシュバックしてきて、不思議な感覚ですね」
「当時は怖いとかはなかったんですけど、何が起こっているのか分からないっていう方が強かった」
そして…道路上を数百メートルにわたって、津波に流されてきた車。緩やかにカーブする地点で道を逸れ、斜面に乗り上げた。
宮世さんと母親は即座に車を飛び出した。そして、斜面を必死に登った。
その後、津波は勢いを増し、乗っていた車は流されていったという。

宮世琉弥さん
「妹たちをそのまま迎えに行ったりとか、どっちか違う方を選んでいたら…死んでいたかもしれない」
「1つ1つ偶然が重なって、いま生きていられるんだというのは…現地に戻ってきて思いますね」
少しでも何かが違っていたら…“自分のいのちが失われていたかもしれない”。
高台に逃げた宮世さん。12年ぶりに現場を訪れ、そこで目にした光景がよみがえってきた。
宮世琉弥さん
「流されている方がいましたし、遺体もそのとき初めて見たので」
「自分だけが助かって良かったのかとか、当時はそういうことも思ってましたね」

仲の良かった同い年のはとこも、亡くなった。
「亡くなったっていうことが嘘だと、ずっと信じ込ませていました。自分の中で」
「自分じゃないいのちもたくさん失われたので。悲しいし悔しいし…色んな感情が湧いてきますね」