牛来さんが歌と向き合うきっかけは・・・10代の頃、ライブハウスで活動していた牛来さんでしたが、太田市に避難したあと、その時の知人から連絡がきたといいます。
福島・浪江町出身 牛来さん
「『こんなときだからこそ歌わないか?』っていう連絡をもらったことをきっかけに、私には歌で伝えることができるって、そのときに気づいたんですよね」
故郷への強い思いを1つずつ紡ぎ、出来た詩が「いつかまた浪江の空を」(キングレコード)です。
「♪遠く遠く 窓の外眺めて 元の未来 探すけれど どこにあるの」
避けられるものなら、避けたかった経験。例えようのない失望感や無力感・・・
一方で、浪江町で過ごした“当たり前の日常”が、いかに尊く、愛しいものなのか、牛来さんは気付かされたといいます。
原発事故から12年「処理水」放出に風評懸念
2月、海の安全や豊漁、豊作を願い、300年以上前から続くとされる伝統行事「安波祭」が催されました。
夜明け前、新しく整備された港に次々と漁船が入ります。原発事故のあとから続いていた漁を限定する「試験操業」が2年前に終了。漁獲量は、徐々に回復してきています。

小川キャスター
「(魚が)ぎっしり並んでますね」
福島・浪江町出身 牛来さん
「並んでますね」
小川キャスター
「アンコウ、カレイ・・・」
柴栄水産 柴強社長
「漁船の数も3分の1ぐらいになってしまいましたんで、仕入れが、そもそも5分の1とか4分の1ぐらいの感じですね、まだ。ただ1年目、2年目、3年目って比べた場合は、順調に売り上げ自体は上がってます」
ここへきて、漁業関係者に新たな不安が生じています。
政府は、福島第一原発で増え続けている「処理水」について、2023年の春から夏ごろに海洋放出する方針を決定。
これまで政府や東京電力は「漁業関係者の理解なしには進めない」としていましたが、なし崩し的に手続きが進められているのが、現状です。

柴栄水産 柴強社長
「漁業者や組合関係者だったり、自治体だったり、一生懸命、風評を払拭しようと思って10年近く積み上げてきて、ようやく風評がだいぶ薄れてきたっていうとこで、また処理水がっていうことになると、この10年何だったんだっていうふうにやっぱり思うと思うんですよね。正直な話やっぱり賛成はできないですよね」