目で見えないからこそ“面白く”“楽しく” 明るい動画配信への思い
話を聞いていると、急にお母さんが「やめてー!!」と言うので振り向くと、もっくんがごま塩を瓶のままラッパ飲みしていた。私は驚いたが、お母さんは冷静に「だめだよ」と、笑顔で注意していた。実は、その笑顔はもっくんの特性への配慮だった。
お母さん
「叱っても意味がないんです。叱ると癇癪起こしちゃう。余計悪循環になるんです」
しかし、もっくんが急に道に飛び出してしまうなど、周りに迷惑をかけたときは“周囲の目”に配慮して敢えて叱るふりをすることもあるという。
お母さん
「外では、もっくんは“普通”にしか見えないんで『何で叱らないんだ、あれは親が悪い』って目で見られることもあるんです。だから、わざわざ“叱るパフォーマンス”をすることもあります。そのたびに、深く理解されなくてもいいけど、もっくんみたいな子もいるってことを“知ってほしい”って思います」

見た目でわからないことを知ってもらうことは、大変で、長い道のりのようにみえる。だからこそ、お母さんは明るく、楽しく発信することを心がけているという。
お母さん
「障害って言葉を聞くと、暗いイメージが多いじゃないですか。面白い感じだったらみんな明るく見てくれるかなって。自閉症を知りたい、と思っていなくても、面白いから見てて気づいたら『自閉症ってこういうもんなんだな』って自然に知ってもらえたらと思っています」
私がもっくんと過ごしたのは2時間程度だったが、急に大きな声を出したり、予想もしない行動をしたりして、驚くことも多かった。しかし、それは私自身が発達障害を頭でしかわかっていなかったからかもしれない。発達障害を日常生活を通して知ることで、実は発達障害という言葉の意味は薄らぎ、むしろもっくんの特性はもっくんの個性になっていくのかもしれないとも思った。もっくんの妹のかりんちゃんが「お兄ちゃんのおもしろいところが好き」と言って笑っていたのがとても印象的だった。