“ヒジャブ”を火に投げ入れ御法度のダンス 激化する抗議デモで死刑判決・少女も犠牲に

イランでは2022年9月、ヒジャブの着用を巡って激しい抗議活動に繋がる事件が起きていた。22歳のマフサ・アミニさん。ヒジャブの被り方が不適切だったとして警察に拘束された。

警察が公開した当時の映像には警察署内で突然、倒れ込むアミニさんの姿が。その後、病院に運ばれたが間もなく死亡した。死因について警察はアミニさんが「心臓発作を起こした」と発表したが、遺族は「頭の骨が折れていた」と主張。拘束中に警察に暴行されたのではないかと疑う声が強まった。

抗議をする市民たち
「独裁者に死を!独裁者に死を!」
アミニさんの出身地のクルド人地域では、女性たちがヒジャブを手に、抗議の声をあげ始めた。街の中心部で座り込んで抗議する女性たちに警察が立ち退きを命じると、激しいブーイングが起こった。

デモはたちまち首都・テヘランをはじめ全土に広がった。

抗議する女性たち
「自由に万歳!自由に万歳!」
若い世代の女性たちが最前線に立ちスローガンを掲げる異例とも言える抗議デモ。

中には大勢の人の前でダンスを披露し、ヒジャブを火のなかに投げ入れる女性も。家族ではない男性の前でヒジャブを外したり踊ったりすることが“御法度”とされるイランでは極めて危険な行為だ。
連帯の意志を示すのは若い世代だけではない。

高齢女性
「(最高指導者の)ハメネイに死を!」
一連のデモは、経済難にあえぐイラン国民の不満と相まって、間もなくイスラム原理主義体制そのものへの批判へと発展していった。

デモ参加者の男性
「共産主義でも社会主義でもいいから打倒させろ!」
事態の鎮静化を図り、各地では治安部隊による制圧が始まった。当局はデモに連帯した著名な俳優を含め、これまでに約2万人を逮捕。

民主化を願う人たちのSNSへの投稿を元に綴った曲で先日、グラミー賞を受賞した歌手のシェルビン・ハジプールさん(25)も一時、拘束された。人権団体によると一連の抗議活動で70人以上の未成年者を含む、500人以上が死亡。

とりわけ多くの死者を出したのが、デモが激化した少数民族が住む地域で、7歳の女の子も犠牲になったという。
逮捕者への“死刑判決”も相次いでいる。これまで、14人が死刑を宣告され、治安部隊の隊員を殺害したなどとして、4人に対する刑が執行された。