“数か月にわたって進められた準備”キーウ訪問のねらいとは?

小川彩佳キャスター:
侵攻からまもなく1年というタイミングで、ウクライナを訪問したバイデン大統領の狙いは何だったのでしょうか?

ワシントン支局 樫元照幸 支局長:
アメリカ軍が展開していない戦場に、軍の最高司令官でもある大統領が自ら足を踏み入れるという大きなリスクをとることで、ウクライナ国民に「決意」と「覚悟」を示した形です。

アメリカ政府高官によると、バイデン大統領は“どんなに難しくてもこの訪問を実現するように指示”し、“数か月にわたって準備が進められた”ということです。

今回の訪問についてロシア側には直前に伝えたということですが、攻撃の対象になる恐れが当然あるので、バイデン大統領の移動手段など詳しい情報はまだ明らかにされていません。

今回、バイデン大統領とゼレンスキー大統領はともに、アメリカ議会の支援の重要性に言及しました。野党・共和党の一部議員がウクライナへの支援の終了を呼びかけるなか、与野党一致しての支援の重要性を議会やアメリカ国民に訴えた形です。

また、新たな軍事支援を表明することで戦闘が長期化する中、国際社会が一致して支援を続けていくことの大切さも示しました。
そして、その延長線上にはロシアや中国と対峙するなかで「民主主義は専制主義に負けないのだ」という、断固とした姿勢を世界にアピールする狙いもあったとみられます。

アメリカはNATOとロシアの全面戦争は避けたい…日本はどう連携?

小川キャスター:
強固な姿勢を示すための、練られた“サプライズ訪問”だったということですが、どうみていますか?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩 氏:
ワシントンからの報告に加えると、1つは21日にプーチン大統領が演説をするので、機先を制して民主主義陣営の結束をアピールした。
もうひとつは、西側から戦車が送られ、もうすぐ揃って運用されるのですが。それまで耐えて頑張ってくれと、物心両面でウクライナの人たちを鼓舞したということだと思います。

小川キャスター:
非常に重要な局面だからこそ、予定にないというかたちをとったということですね。

星 氏:
ポーランドに行く予定があったのですが、それをウクライナまで急遽足を伸ばして。恐らく列車で電撃訪問したということだと思います。

小川キャスター:
アメリカ側としては、どのような訪問なのでしょうか?

星 氏:
今ウクライナからすると、ロシアと戦ううえでさらに「戦闘機が欲しい」と。戦闘機を供与するとなると、NATOとロシアの全面対決になりかねません。アメリカからすると戦車を供与するので、“当面はそれで頑張ってくれ”ということでバイデン大統領が念を押したというのが狙いだと思います。

小川キャスター:
ここに日本はどう連携していく必要が?

星 氏:
日本は軍事的な支援はできませんが、G7の議長国ですので。西側の結束を保ちつつ、とりわけ中国に対して“ロシアに対する支援を見送るべき、自制すべきだ”と、日本が独自のパイプを使って中国に対して自制を求めていくかというのが、これからのカギになってくると思います。