約3年間にわたり、新型コロナの診療に最前線で携わってきた医師に今、別の問題がのしかかっています。その要因の1つが流行期に入っている「インフルエンザ」
医療機関が直面している苦悩を取材しました。


ながたクリニック 永田理希院長
「2月に入ってから9割がインフルエンザ、1割がコロナ。地域的なものもあると思うが、一気にインフルエンザが増えてきているという印象がある」

ながたクリニック 永田理希院長


加賀市山代温泉のながたクリニック。
発熱や感染症外来、後遺症外来などを併設していて、これまでおよそ3年間にわたって、新型コロナ患者の診療に携わってきました。

しかし今は、さらにインフルエンザの流行によって、より大きな負担を強いられています。

ながたクリニック 永田理希院長
「去年、一昨年は流行っていなかったので、ワクチン接種率がかなり少ないという印象がある」

ただ、このインフルエンザも流行期にはあるものの、平年と大きく変わらない推移をたどっています。

石川県の定点把握によりますと、先月30日から今月5日までの間に、48の医療機関で確認されたインフルエンザの感染者は1,100人でした。1機関辺りは22・92人で、週を追うごとに感染者は増えていますが、警報が発令される基準の30人には至っていません。

では、一体どこで診療の負担は増えているのでしょうか。

インフルエンザの診察 コロナ診療の医療機関に集中か


ながたクリニック 永田理希院長
「コロナ禍になって発熱、かぜ症状を診ない医療機関がかなり増えた。(そういった医療機関が)発熱がある人をみな断っているから、発熱とかぜ症状を診ている医療機関に(患者が)集中する」


永田院長が指摘するのは、新型コロナの診療を続けてきた医療機関の負担の増加。

この3年間、発熱などの症状のある患者を受け入れてきた医療機関にインフルエンザなどの別の病気の患者も集中しているといいます。

ながたクリニック


さらに、感染症を専門としない他の医療機関などで受けた診断に不安を感じた患者への2回目の診察も、大きな負担となっています。

ながたクリニック 永田理希院長
「子どものインフルエンザは胃腸炎の症状でよく現れる。コロナも胃腸炎の症状で現れることが多い。他院でこの3年間、ずっとコロナを診てなかったところは症状を診て(コロナではなく)胃腸炎だと言ってしまう」


こうした負担によって、医師やスタッフは、9日までの3年間、昼休みもなしに働く状態が続き、憔悴しきっています。

クリニック内のスタッフ

「5類」への移行で状況に変化は

今年5月には新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、全ての医療機関で新型コロナの入院、診察が可能とされていますが…

ながたクリニック 永田理希医師
「5類になったらどこの医療機関でも診られるようになるというが、それはまずない。この3年間で知識と経験の差が医療機関や医者のあいだでも広がっている。かぜ症状はうちでは見れないという医療機関が、急に5類になったら診るとはならない」


コロナ禍で診断を重ねた医療機関が、今後も大きな負担に苦しめられる状況は続いてしまうのでしょうか。