クリオネに訪れる危機…まだ不思議の多い存在

実は、クリオネにとって、海洋酸性化の影響が心配されます。二酸化炭素は空気中に漂っているほか、海に吸収されていますが、二酸化炭素を吸収すると海は酸性寄りに傾くのです。海の酸性化があまりに進んでしまうと、クリオネのエサであるミジンウキマイマイは殻が溶け、うまく生育しなくなるおそれがあります。エサが減れば、クリオネ自身にとっても大変な問題です。しかもクリオネが分布するような冷たい海ほど酸性化の進行ペースが早い傾向があるため、今後はいっそう注視していかなくてはなりません。

クリオネの生態は、いまだ解明されていない謎が多くあります。なぜ、体の末端が赤いのか。進化の過程で、猫耳のような触角がもたらしたメリットとは。さらには、海の多様な生態系のなかでクリオネはどのような位置づけなのか。これらの謎の、答えを知りたいような知りたくないような複雑な気持ちです。私にとってクリオネは、ミステリアスだからこそ魅力が増す、不思議な存在です。

“好き”に芽生える探究心から導かれる世界

私は、クリオネを好きになったことがきっかけで、クリオネを研究されている方々と交流を持つだけでなく、ガラス教室の先生や生徒さんとも交流を深めることができました。オリジナルの作品を生み出す楽しさも知りました。さらには、クリオネのいるオホーツク海や海洋酸性化の問題を知りたい、そしてそれらを周りへも伝えていける人になりたいと思うようになりました。
マニアの程度が行き過ぎると、ほかの人には理解されなかったりすることがあるでしょう。とはいえ、自分が好きなものに対して芽生えた強い興味や探求心は、大事にすべき部分だと思います。自分の好きなものを好きと言えばいいし、興味があることをどんどん深めればいい。そうすると、さらに新しい出会いがあったり、感動があったり、これまでとは違う新しい視点に出会えてもっとワクワクできる世界に導かれるのではないでしょうか。