さらにA社とB社がお互いに知っていたのではないかという資料もある。それが以下のものだ。
【鑑定評価の取引事例】
(取引事例地、取引価格(1平方メートルあたり))
▼A社
愛知県:8万1682円
福岡市:21万7775円
愛知県;6万5000円
個別価格(1平方メートルあたり):12万円
▼B社
愛知県:8万1682円
福岡市:21万7775円
茨木市:11万3438円
芦屋市:9万3円
個別価格(1平方メートルあたり):12万円
「鑑定評価の取引事例」として、過去の事例を基に算出をするが、A社とB社はともに愛知県・福岡市の事例を参考にしている。この中で、愛知県の事例は公になっている情報で、愛知県の鑑定士協会のデータベースから引用されている。しかし、福岡市の事例については、福岡県の鑑定士協会のデータベースにはなく、独自取引のデータとみられる。独自取引事例ではあるが、A社もB社もこの福岡市の21万7775円を採用していた。A社は全国に展開する大手企業で、そうした独自の取引事例を入手もありえると推測されるが、鑑定業者にとって独自の取引事例は取引上の秘密で、基本的に他社に話すということはない。にもかかわらず、個人事業主であるようなB社も、A社が採用している独自取引事例をなぜか知っていた。田原さんや取材した鑑定士の中には、この点を不思議だと指摘する鑑定士もいる。
今回、不動産鑑定を行った4社に対し質問状をなげかけたが、答えていない質問や正面から答えていないものもあり、誠意ある回答ではないと田原さんは指摘する。鑑定業者を含めて、納得のいく説明責任を果たすべきだとしている。