■配給はニンジン10本、キュウリ10本、キャベツ1玉 「共同富裕」はいずこへ

政府からは食料などの配給は一応、行われている。記者宅には3月31日に初めて届き、4月20日まで5回の配給があった。世帯ごとに配られ、家族の人数にかかわらず内容は同じだ。
3月31日 ニンジン(10本) キュウリ(10本) キャベツ(1玉)
4月1日 素麺(6人分) ランチョンミート(1缶) ソーセージ(10本)
4月9日 ワッフル(6枚) 食用油(1.8L) 牛乳(250ml×12)
4月13日 菓子パンケーキ(15個) クッキー(2袋) 食塩(225g) ベーコン(2枚)
4月20日 ステムレタス(2本) キュウリ(3本) タマネギ(3玉) ナス(3本)
日本の同僚から「配給もあるから大丈夫だろ?」との声も届いたが、5人家族で、これだけで暮らすのは正直無理だ。他の区域で冷凍の牛ステーキやニワトリ(丸ごと1羽!)などが支給された例もあり、どこもそうだと誤解されていたのかもしれない。せめて配給だけは中国政府の掲げる「共同富裕」を実現できなかったものか…そう思わずにいられない。
■「ロボットになったのか」募る市民の不信感 上海市トップに詰め寄る「英雄おばさん」

“ロックダウン”以降、食料不足にあえぐ上海市民らが集団で抗議する動画がSNS上で散見される。出動した警察と市民らが衝突する様子も確認できた。視察中の上海市トップ、李強書記に女性が詰め寄り、抗議する事態まで起きた。政府批判に厳しい態度で臨む中国にあって市民が政治家に直接抗議するのは異例の光景だ。李強氏は次の首相候補とも言われる有力政治家で、詰め寄った女性はネット上で「英雄おばさん」と称されている。記者の周辺でこうした行動は見られないが、やはり不満を抱える市民は確実に増えていると感じる。
4月11日、市当局は2万4000以上に細分化した居住区域のうち、14日間感染者が確認されなかった4割以上の区域について外出を認める決定を出した。その日のうちに解放された区域があった一方で、記者の住む東エリアは2日経っても何の通知も無かった。しびれを切らした同じエリアの中国人らは、公然とSNS上に不満を書き込むようになった。
「情報を公開しないなら、PCR検査はもう受けない」
「何日も沈黙してロボットになったのですか?」
3日後、ようやく通知が出された。「地域全体の感染者が多いので、感染者が確認されなかったところについても外出は認めない」。しかも期限は明記されていなかった。3月19日に自宅マンションが封鎖されて以降、PCR検査・抗原検査を合わせ23回行い全て陰性だった記者と家族だが、封鎖生活はゴールが示されないまま続くことになった。