視聴者・読者の視点に立ったチャレンジを
すでに報道界にとっての共通認識になっていると信じるが、情勢報道・量的平等報道といったこれまでの選挙報道のキホンはいったん横に置いて、視聴者・読者の信頼を回復するうえでは、イチからの出直しが求められている。形式的な公平公正原則や「検証・監視は非報道」という“思い込み”は、捨てる必要があるということだ。
こうした既成の固定観念からの転換という意味では、多くの報道機関において2025年前後に策定し直した選挙報道指針などで再確認が進んではいるわけだが、視聴者・読者の視点に立ったチャレンジが求められている。
誰のために何を報ずるかを考えるならば、従来の選挙報道がややもすると、より多くの情報をより早くそのまま伝えるに偏りがちだった。そこから、有権者のため要点を分析つきでわかりやすく伝えることをより強く意識するといった転換も必要だろう。その時に「プレス・ファクトチェック」は大きな足掛かりになるはずだ。
情勢報道も必要な場合もあるとは思うが、ここに資金も人材も大量投下した結果、そのデータは有権者よりもむしろ候補者(一部支持者)のためになっているきらいはなかったか、そうした見直しも求められている。その人員の1割でも、選挙期間中の偽・誤情報に対応できる余裕を持った人材配置が必要ということになる。極論、経験がある記者を1人、専任にするだけでも違った展開ができるはずだ。
先にも触れたように、ファクトチェックは結果だけでなく、その根拠を示すことが絶対条件で、それは事実検証という取材過程の「見える化」である。この取材の透明性確保は、選挙報道や政治報道に限らず、すべてのジャーナリズム活動において共通の視聴者・読者の信頼回復のためのスタート地点になりうるだろう。それは、いかに手間をかけ真実追及努力をしているかの証しであり、ネット言説とりわけSNS発信との違いを示すものだ。フェイクニュースを見破る力を有する報道機関(プレス)によるファクトチェックが、きちんと社会に評価されるかどうかの正念場にある。
<執筆者略歴>
山田 健太(やまだ・けんた)
専修大学ジャーナリズム学科/大学院ジャーナリズム学専攻教授。
専門は言論法、ジャーナリズム学。
自由人権協会代表理事、日本ペンクラブ副会長。放送批評懇談会、情報公開クリアリングハウスなどの各理事を務める。BPO人権委員会など歴任。
主な著書に、『法とジャーナリズム 第4版』(勁草書房)、『ジャーナリズムの倫理』(いずれも勁草書房)、『沖縄報道~日本のジャーナリズムの現在』(ちくま新書)、『転がる石のように~揺らぐジャーナリズムと軋む表現の自由』(田畑書店)ほか多数。
専修大学で一般公開の「表現の自由研究会」を開催中。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














