「常人では想像できないことをやりたい」地元・愛知への熱い恩返し

これまでセレモニーの演出依頼はすべて辞退してきたという堤だが、今回の大役を引き受けたのには特別な理由があった。

「これ、名古屋じゃなきゃやってないです。小中高と人格の基本を作る時期を名古屋で過ごして、子どもの頃から見聞きしたものや体験したものがずっと人生の培養液みたいになっていて、今の作品作りに非常に役に立っている。その恩返しをしたい思いはずっとある」

舞台となるのは、名古屋市内にある瑞穂公園陸上競技場。数々の演出を手掛けてきた堤にとっても、屋外での大規模セレモニーは初めての挑戦となる。

「計算され尽くしたショーかと言えばちょっと違うかもしれない。『それは無茶だろ、無理だろ』ということをあえて提案して、常人では想像できないことをやりたい。舞台の演出をしていても、無限に表現する選択肢はある。スタジアムでも真っ暗闇にすることもできるし、真っ暗闇の中に光を1個、点を打つようにもできる。セリフがなくても、音楽という手段を奪われたとしても、やれることはあると思う」

7月中旬、開会式の準備が進む愛知県体育館では、出演者たちが着用する衣装のデザインチェックが行われていた。メルヘン的なイメージのものから和の要素、近未来の要素、“産業の街”愛知を象徴するスーツのようなものまで多種多様だ。からくり人形の衣装を着たキャストに対しては、具体的なアドバイスを送る。

「中に針金を入れて髭みたいに、『八』みたいな形はどう?『八』というのはこの街の象徴でもあって、市のマーク(丸八=名古屋市の市章)でもあるんです。漢字の八みたいになっていると面白い」

リハーサル風景を見て「アベンジャーズ感が出てきた」と話すスタッフに対し、堤は「巨大な学園祭です。そうやって発想しないと。何かに萎縮したり躊躇していたら、なかなか想像を突破しないので。なるべく発想を自由にしていかないと」と笑う。

準備会場となったこの体育館も、堤にとって思い出深い場所だ。

「中学生の時に卓球の国際大会があって。自分も卓球部だったのでここで卓球をやって、世界とスポーツで交流できるというのはとても良かった。高校生の時にはロックバンドを始めたので、ここで数々の外国人タレントを見ては狂喜乱舞した。そういう思い出の地で演出ができるのは地元孝行ですね。最後の地元孝行になるかもしれない」