独創的なアイデアを生み出す源泉と「70歳の過密スケジュール」
堤の日常は、まさに多忙を極めている。複数の仕事を同時に抱え、作品作りのために全国を駆け回る。
「この後もう1つ別作品のリハがあって、夜に新幹線で広島に行って、明日は瀬戸内海で映画のロケハンをしなくちゃいけない。70歳のスケジュールじゃないね」

そう笑いながらも、リハーサル現場に入れば一瞬で真剣な表情に戻り、「スタート!」と声を張る。
日常のあらゆる瞬間からネタを拾い上げることが、彼の創作の源泉だという。
「ネタを拾うみたいなことはありますね。常日頃、道を歩いていても、何をしていても。お好み焼きを食べていて、『広島のお好み焼きってキャベツが自重でジューっと水蒸気を出しながら沈むと甘みが出る。“押すなキャベツ”っていうタイトルで映画が作れないかな』とか。あとは映画を観ることですね。週に1本か2本は必ず。公開されて話題になっている作品はほぼ観ている。自分の映画は絶対に観ない。狙っているところでお客さんが笑っていなかったりするとショックだから…気が小さいんです」
ドラマ・映画・舞台の監督として多くのヒット作を送り出してきた堤だが、幼少期から監督を目指していたわけではないという。

「映像業界には全く興味がなかったですね。大学を中退してどうしようかなと思っていたら、漫画みたいに足元に新聞が転がってきて、そこにテレビのディレクターの募集記事が書いてあって。『何にもできないしサラリーマンにもなりたくない俺だけど、テレビのディレクターならできるかもしれない』と思って映像制作の専門学校に行ったのがきっかけです」
29歳でテレビのバラエティ番組ディレクターとなり、プロモーションビデオの演出などを経て、32歳の時にオムニバス映画の一作で監督デビューを果たす。今年5月には人気小説が原作のサスペンス映画「ミステリー・アリーナ」を、そして6月には原案から手掛けたオリジナル映画「hinata」を公開。「hinata」は主役不在、無名の俳優20人を起用した異色の作品だ。
規模も制作手法も全く異なる2つの映画を同時に作り上げた堤は、監督の役割を「オーケストラの指揮者」に例える。

「技量の違う演奏者がいっぱい集まったのを指揮者がコンダクトしてバランスを取ったり、強弱を決めて感情を作っていく。(指揮者が違うと)同じ譜面でも音は全然違います。東野圭吾さん、横溝正史さん原作の映画がいっぱいあるけど、やっぱり『監督』で見てもらえるようになりたいなと思うし、それを目指して戦っています」

















