残された課題

さて、リスク評価・軽減措置により安全設計を促すとしても、それら保護措置が適切に青少年の元に届かなければ意味がありません。そのためには、ユーザーの年齢確認はいずれにせよ必要不可欠となりますが、問題は現状の年齢確認(主に自己申告制)システムの信頼性が著しく低いことにあります。

そこで第一次報告書は「適切な保護措置が確実に機能するために、サービス設計や特性等に応じた『年齢確認』の厳格化を検討すべきではないか」(45頁)と指摘しています。ここでいう年齢確認は、一律年齢制限と組み合わさった「追い出すための年齢確認」というよりも、「年齢に応じたサービスを受容してもらうための年齢確認」であると言えます。

この点、年齢確認の仕組みには、プライバシー上の懸念や、情報漏えいのリスクが伴いますが、この問題を置き去りにすることは適切ではありません。フランス憲法院が、先の法律を違憲と判断した要素の一つとして、年齢確認に際し、私生活上の利益(プライバシー)に対する適切な保護を立法者が提供できていないことを挙げている点に、留意すべきでしょう。

この点、EUのデジタルサービス法28条に関するガイドラインでは、年齢確認手法についてはプライバシーに配慮された形が求められており、オーストラリア最低年齢法における年齢確認も、プライバシー保護とデータ最小化をはじめとする6つの原則にそった形でリスクに応じたバランスのとれた手法を採用することを求めています

年齢確認は、青少年当人に限らず、成人にも求められることになり、成人の知る自由やプライバシーに相応の負荷がかかることが予想されます。こうした成人に対する負荷は、青少年保護施策に伴う「附随的」なものともいえるところですが、とはいえ、過剰負担は正当化しえません。

年齢確認手段には、さまざまな方法があるところ、日本において議論を進めるうえでも、こうしたプライバシーとのバランシングは特に配慮して進める必要があるでしょう。

最後に、日本における青少年保護のためのソーシャルメディア規制に関する議論は、各国よりも遅れて始まっています。オーストラリアの一律年齢制限が額面通りうまくいっていない(ある調査によれば、法律の施行後4か月時点で、14~15歳のうち実際に利用をやめたのは3人に1人未満とされています・注6)ことを踏まえるならば、この「後追いの利点」を活かし、各国の規制動向を横目に見つつ、最適な仕組みを選び取る必要があるのではないでしょうか。

(注6) Leonardo Bursztyn et al., Why bans fail: Tipping points and Australia’s social media ban (2026)

<執筆者略歴>
水谷 瑛嗣郎(みずたに・えいじろう)
1986年4月18日生まれ。慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所准教授。博士(法学)。専門は憲法・メディア法。
同志社大学を卒業後、慶應義塾大学大学院法学研究科公法学専攻博士課程を単位取得退学。帝京大学法学部助教、関西大学社会学部准教授を経て、2025年4月より現職。

デジタルメディア時代における表現の自由及び報道の自由に関する論稿多数。総務省・デジタル広告ワーキンググループ、同・青少年保護ワーキンググループ構成員、日本ファクトチェックセンター運営委員、放送倫理・番組向上機構放送倫理検証委員会委員などを務める。

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