現在の青少年はSNSによる様々なリスクにさらされている。有害コンテンツに接触する「コンテンツ・リスク」、非行行為に誘導されたり犯罪の被害者となったりする「コンタクト・リスク」、そして無限スクロールやプッシュ通知などでSNSへの依存度を極端に高める「サービス設計リスク」。これらのリスクから青少年を守るにはどうすればよいか。必要なのは青少年をSNSから「追い出す」ことではなく、いかに安全な製品・サービス設計を事業者に促すかではないか。慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の水谷瑛嗣郎准教授による論考。
各国で始まる青少年保護のためのソーシャルメディア規制
2021年に“Facebook Papers”と呼ばれる内部告発文書が暴露されてから、早5年が過ぎようとしています。この文書の存在は、2016年以降、問題視されていたデジタル・プラットフォーム(DPF)事業者の課題を浮き彫りにするものでした。
公開されたいくつかの文書の中には、同社のInstagramが10代の子どもたち(特に少女)のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしている可能性があることを示唆した調査結果が含まれていました(注1) 。これら内部告発文書は、ウォール・ストリート・ジャーナルをはじめとする報道機関で報じられ、その後、各国で青少年を悪影響から保護するためのソーシャルメディア規制の議論が展開されていくことになりました。
特に、本国アメリカでは、州レベルでさまざまな規制が作られています。2026年8月現在、少なくとも21の州において、何らかの形で青少年保護のためのソーシャルメディア規制が制定されていると指摘されています(注2) 。
(注1) Georgia Wells, Jeff Horwitz and Deepa Seetharaman「インスタグラムは10代少女に有害=内部資料」 The Wall Street Journal(日本語版), 2021年9月15日
(注2) The Age Verification Providers Association, State laws for social media
一方、EUは、2022年に制定したデジタルサービス法の中で、「未成年者のプライバシー、安全、セキュリティをハイレベルで保護するため、適切かつ比例的な措置(appropriate and proportionate measures)」をとるように事業者に義務付けていました(28条)。
加えて、VLOP(Very Large Online Platforms)と呼ばれる超大規模オンライン・プラットフォーム事業者に対しては、未成年者の保護をはじめとする各種のシステミックリスク(個別の問題が、他者や全体に波及するリスク)を評価、分析し、必要に応じて軽減措置をとること(34、35条)を、当然払うべき注意義務(デューデリジェンス)として課しています。
そして2024年、オーストラリアは、オンライン安全法を改正し、16歳未満の青少年にソーシャルメディアのアカウントを作成させないための合理的措置(reasonable steps)をとることを、ソーシャルメディア事業者に義務付けました(ソーシャルメディア最低年齢法)。
しばしば見過ごされがちですが、すでにソーシャルメディア各社は、利用規約に基づいて年齢制限を自ら課しています(多くの場合、そのラインは13歳未満となっているのですが、これはアメリカの児童オンラインプライバシー保護法に由来すると言われています)。
オーストラリアの規制は、こうした年齢制限に政府が「上乗せ」をする規制、と整理することができるでしょう。同時に、同法の立法説明覚書(Explanatory Memorandum)によると、「合理的措置」の一環として年齢確認が義務付けられることが想定されていました。現在のソーシャルメディアにおける自主的な年齢確認は、多くの場合が自己申告であり、信頼性が低いものと言わざるを得ず、より厳格で信頼性の高い年齢確認手段が事業者に求められることになります。














