コンテンツ/コンタクト・リスクから、サービス設計リスクへ

さて、ソーシャルメディアに限らず、メディアに伴う青少年へのリスクとしては「コンテンツ・リスク」と「コンタクト・リスク」が挙げられます。

前者は、いわゆる「有害コンテンツ」(主として性表現や暴力表現、自殺・自傷行為の推奨等)に接触することで青少年の健全な育成が阻害されるリスクを指し、後者はいわゆる非行行為や犯罪への加担(例えば、ソーシャルメディアでの接触からトクリュウの実行役に巻き込まれる)、さらには犯罪の被害を受ける(例えば、 ソーシャルメディアでの接触で性犯罪の被害に遭う)といったリスクになります。

これまで日本においては、コンテンツ・リスクについては、地方自治体の青少年健全育成条例の有害図書類規制やインターネット青少年利用環境整備法のフィルタリング提供義務によってカバーされてきました。またコンタクト・リスクについては、例えば出会い系サイト規制法は、事業者に年齢確認を義務付けており、青少年が性被害等に巻き込まれることを防いできた側面があると言えます。

これらのリスクはソーシャルメディアがコミュニケーション・ツールの主軸となった現在においても、まだまだ「健在」といえるかもしれませんが、むしろ青少年の利益の観点から本腰を入れて考えなければならないのは「サービス設計に伴うリスク」です(注3)。

ソーシャルメディアは、私たちの稀少資源であるアテンション(注目)をいかに引きつけるかをビジネスモデルの根底に抱えています。そのために事業者は、ユーザー・エンゲージメント(消費者が特定の商品、サービスに対して抱く愛着、関心)を強化するために、自社サービスのユーザー・インターフェイスやアルゴリズムなどをデザインしています。

まるでスロットマシーンのような無限スクロール機能や、人々の選好を予測してコンテンツの表示順を決定するレコメンド・アルゴリズム、新たな投稿を知らせて注意を奪うプッシュ通知などは、これらビジネスモデルのもとで設計されたものと言えます。

こうしたサービス設計は、「精神的に未熟であって」、情報や知識の「選別能力を十全には有して」いない青少年(注4)から、情報摂取のための自律的な制御権を奪っています。我々大人ですら、自らソーシャルメディアの使い方を意識的に制御できず、しばしば「時間を溶かし」てしまいます。関連して、ソーシャルメディアの依存的利用(Addictive Use)が、学業への障害、睡眠障害、メンタルヘルスの悪化をもたらす可能性も指摘されています。

今年の3月、アメリカのカリフォルニア州で評決が下された民事裁判K.G.M. v. Meta Platforms Inc.は、まさにこうしたリスクの責任をMeta社をはじめとするDPF事業者に問うた訴訟でした。原告のケイリーさんは、ソーシャルメディアの無限スクロール機能をはじめとするサービス設計に欠陥があったことで、自身のメンタルヘルスの悪化を招いたと主張しました。

この訴訟が画期的であったのは、Meta社の責任を製品安全、すなわち製品の「設計上の欠陥」の観点から追及しており、これによりDPF事業者にコンテンツ流通等の責任について広範な免責を与えている通信品位法230条の適用を回避した点にあります。その結果、陪審は原告有利の評決を下し、MetaとGoogleに合わせて(懲罰的賠償を含めた)600万ドルの損害賠償を認めています。

(注3) 同趣旨の指摘をするものとして、斉藤長行「『やめられない』のは誰の責任?:ロサンゼルス陪審評決がMeta・Googleに示した、SNSの“設計責任”という論点」note, 2026年3月27日
(注4)最三小判平成元年9月19日刑集43巻8号785頁)伊藤正己裁判官補足意見