選抜高校野球大会の出場校発表が1月27日に迫っている。厳しい寒さ、冷たい北風の中、球児たちが歓喜に包まれる様子を思い浮かべると高校野球ファンならずとも心躍る春の訪れを感じる人も少なくないだろう。
その「春のセンバツ」で、ちょうど10年前の2013年、甲子園を沸かせた「1人の剛腕投手」を覚えているだろうか。

愛媛・済美高校の安樂智大投手だ。
現在プロ9年目、楽天のセットアッパーとして2季連続50試合以上登板し、昨季は6勝をマークするなど活躍。「20年活躍したいし、20勝投手になりたい」という思いをこめた「背番号20」も186センチ87キロの大きな体には小さく見える。
そんな安樂投手がかつて一躍時の人となったのが、’13年春のセンバツ。’04年の「初出場初優勝」以来、9年ぶり2度目の済美を2年生エースとして準優勝に導いた。
ただ、MAX152キロの球威とともに注目を集めたのが、3連投を含む決勝までの5試合で772球を投げた「肩と肘」だった。
その後、772球はアメリカのメディア等を巻き込み「球数制限」「日本の野球文化」「甲子園の存在」などへとテーマを変えながら大論争へと展開していったが、安樂自身は当時、上甲正典監督(故人)との深い信頼関係のもと納得の登板であることを報道陣にも語っていた。

そんな周囲の喧騒をよそに安樂投手はその年、夏の愛媛大会準決勝で圧巻の157キロ、夏の甲子園では当時最速タイの155キロをマークしチームを8強に導く。さらに台湾での18U野球ワールドカップでも2年生ながら日本代表入りを果たし、準優勝にベストナイン。その強靭な肉体とハートの強さは規格外の剛腕としてNPBからも注目されるなど全ては順風満帆に見えた。
ところが――