「やめろと言わず、否定せずに寄り添う」 抜け出すための“処方箋”とは

オーバードーズに悩む少女らの支援をするれいあさん。実は彼女も、かつてオーバードーズを繰り返したことがあった。貧しい家庭に育ち、小学生の頃から、幼い兄弟の世話を担う“ヤングケアラー”だったというれいあさん。19歳のとき、限界を迎えたという。

れいあさん(30)
「逃げたかったのは現実です。当時のツイッターでいろいろ『消えたい』とか、『しんどい』みたいなのを調べて、いっぱい飲むことで楽になれるんだっていうオーバードーズを知りました」

咳止め薬を大量に飲むようになったれいあさん。オーバードーズは28歳まで続いた。だが、ここ2年間はオーバードーズをしていない。きっかけは9年前、「BONDプロジェクト」に保護され、スタッフの竹下奈都子さんと出会ったことだった。

「あ、やっちゃったか…ということは、何度も何度もあった」と竹下さんは振り返る。

BONDプロジェクト 竹下奈都子さん
「でも、『やめなよ』という言葉は使いません。1人でやめられるものでもないですし。やめられる方向に持っていけるように、本人と対話を重ね、一緒に過ごすことを繰り返していく。気持ちは本当に一瞬一瞬変わっていくので、今やめても、次の瞬間は飲んじゃうかもしれない。『今、飲まなかった』『今日、飲まなかった』っていうことを、一瞬一瞬1日1日続けていくことで、飲まなくてもいい期間が少しずつ増えていく」

竹下さんは、れいあさんの胸の内を否定せずに最後まで聞き続けることを繰り返したという。そうすることで、薬を飲まなくてもいい期間が、徐々に伸びていった。
責められることなく、自分の苦しみを受け止めてもらえる安心感。それこそが、薬に頼らない時間を作る「処方箋」なのかもしれないと、竹下さんとれいあさんは感じているという。

国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部 嶋根卓也さん
「ODを繰り返したときに、責めたり否定したりする大人がいると、大人の前で子どもたちは正直になれません。やはり、ODしたことを安心して話せるような関係性や場所を増やしていくことが、この問題のゴールを目指す上では重要になってくると思います」

LINEなどSNSのチャットを通じて、若者たちから様々な相談を受けている団体がある。「ハームリダクション東京」。年間およそ3000件のチャットの6割以上が、「オーバードーズ」についてのものだ。共同代表の古藤吾郎さんも、「薬をやめなさい」とは決して返信しない。話を聞き続けることを大切にしている。

古藤吾郎さん
「ここは、『ここでだったら安心して話していいんだ、安全に話せるんだ』というオンライン空間なんです。『ODはもうやめなさい』と言うと、チャットが終わってしまう。見えないところでODが続くということになるので、それだと、実は命を救っているのではなくて、むしろ命を守れないということになってしまいます」

れいあさんは、歌舞伎町で少女たちに声をかける活動を続けている。
18歳のマナさん(仮名)にも話しかけた。

BONDプロジェクト れいあさん
「きょうは何しに来たの?」
マナさん(仮名)
「きょうは普通に遊びに来た」
BONDプロジェクト れいあさん
「それはどうして?」
マナさん(仮名)
「居場所だから」
BONDプロジェクト れいあさん
「行って楽しいって思う時もあるけど、辛いって思う時もある?」
マナさん(仮名)
「楽しくない時もある」
BONDプロジェクト れいあさん
「楽しくない時もあるんだ、どんな時?」
マナさん(仮名)
「パキってないとき」
BONDプロジェクト れいあさん
「飲んでると楽なの?」
マナさん(仮名)
「うん」

BONDプロジェクト れいあさん
「今、居場所を求めている子たちにとって、自分の存在が居場所になれたらと強く思います。一人で抱え込んでいる子がいたら、『大人に頼っていいんだよ』ということを、何度も諦めずに伝えていきたいです」