2007,2010当時の議論:前田論考と「国立文化施設等に関する検討会」資料から

慶應義塾大学名誉教授で美術史学者の前田富士男は「文化行政と評価−評価の再構築にむけて」(2007)の中で、「『文化行政』や文化事業という重要な領域における評価作業は、この10年ほどの間に大きく改善されたが、あらためてシステムにおける『評価』を再検討・再構築する局面」を迎えているという立場で、制度改革の過程で、今後ますますひろく深く徹底して議論されなければならない機能とは「評価」であると主張している。

その上で独立行政法人における評価の課題を3点挙げているが、3点目に定量評価と定性評価の問題を指摘している。文化行政の評価では、定性的な評価の重要性がよく認識されねばならない。なぜならば定量的評価の一人歩きは文化行政にダメージを与えかねないからと警鐘を鳴らしている。

一方、財源の多角化に関しては、2009年に「独立行政法人及び政府関連公益法人の抜本的見直し」が閣議決定され、2010年の行政刷新会議による事業仕分けで、民間からの寄附、自己収入の拡大などを徹底し、国からの負担を増やさない形での事業充実を図るべきであるとの評価結果が示された(文化庁「国立文化施設等に関する検討会」における論点整理(2010))。その後、政権交代しているが、この方針は堅持されている。

実は、このような議論が出てきたころから、博物館学関係の学会ではアメリカのミュージアムの財源は、「国や州からの政府資金」「寄附」「基金」「事業収入」の4つから構成され、財源の多角化を保っているという知見が広く共有されていた。

「国や州からの政府資金」とは、我が国の独立行政法人でいえば国からいただく「運営費交付金」にあたり、この削減がいま焦点となっている。「寄附」には、法人や財団などからの寄附、個人寄附、場合によっては友の会会費なども含まれる。「基金」とは、寄附金などを基金として積み立て運用した収益を指す。「事業収入」は、チケット収入やミュージアムショップ・カフェなどの収益、教育プログラムでの収入、イベント収入など多様である。

しかも、この4つのどれか1つの財源に偏ることなく、4つが等分とまではならなくても、どれか1つの財源が潤沢でなくなった場合でも、ほかの3つの財源でうまくカバーできるような工夫、つまり持続可能性を担保する仕組みをアメリカのミュージアムは持っていることは周知の事実であった。ただし、アメリカのミュージアム発達の歴史、寄附などに関する社会的慣習が異なるので、日本の社会に合致した方法や進め方を探ることが必要であろうと考えてきた。