あなたがもらった宝物だから
頑張っていた良典さんだったが、5月になると使える抗がん剤がなくなった。新しい治療法を模索していたが、6月には緩和病棟に入院することになった。
阿部さんのサインは、ゴールドの額縁のまま病室に飾られた。
「ちゃんと見てくれているから頑張らないと」
来年4月のめいの入学式にも出る、ランドセル姿を見るんだ。
亡くなる3日前まで、体力をつけようと病院の中を歩いていたという。
2024年6月8日、良典さんは旅立った。43歳だった。
棺の中には、阿部さんのハガキを入れた。
「家宝にするって言ってたけど、夫がもらったものだから」
サインは夫に持たせたいと思った。














