手足が思うように動かないなどの症状が見られる脳性麻痺。
愛媛県松山市に、この障がいと向き合いながら絵を描き続ける男性がいます。
息子の笑顔と“今”を大切に…活動を支える母の思いを見つめます。

愛媛県松山市内で開かれている絵画展には、彩り豊かな動物たちが並んでいます。

描いたのは、松山市に住む武安拓実さん(27)。
拓実さんには脳性麻痺と知的障がいがあり、日々の生活には母・純子さんら周囲の介助が必要です。

(母・純子さん)
「1歳半くらいで歩いているけど、ペンギン歩きというか、平均台を歩いているような」

拓実さんが脳性麻痺と診断されたのは、2歳半の時でした。

(母・純子さん)
「ものすごいショックは受けましたね。3か月以上は泣いて過ごしましたね。この人がいない所でですけど、だいぶ落ち込みました。親の気持ちってやっぱり分かるんですよね、小さくても。だから、よく下から私の顔を覗いてましたね」

脳の一部が傷つくことで引き起こされる脳性麻痺。症状には個人差がありますが、拓実さんは10歳頃から杖を使うようになり、特別支援学校の中学部に入学後は車いす生活に。20歳を過ぎる頃には会話が難しくなりました。

(母・純子さん)
「今日はちょっと(体が)硬いと思います。ペンを持ってどうかなっていう所はありますね」
 幼稚園の頃、帰宅するといつも絵の具まみれだったという拓実さん。

好きなことを伸ばしてあげたいと、純子さんは13歳から拓実さんを絵画教室に通せ始めます。公募展に出品するようになると様々な賞を受賞し、愛媛県主催のコンテストをきっかけに、プロのデザイナーとコラボした商品開発も実現。

さらに、国際的な美術展「パラアートTOKYO」では、おととし・去年と2年連続で入賞を果たしました。

(拓実さんが師事する画家・上田勇一さん)
「迫力があって良い、見た人が明るい気持ちになるのも良い。色んなコンクールに出して大きな賞をもらうことも❝確かに私はここにいる❞ってこと。絵を1枚残すことによって、拓実くんという存在が確かにいるってことになるので」

(母・純子さん)
「本人の希望が叶ったというか、好きなことで認めてもらえた」

とはいえ、手の震えや体の硬直が激しい日は、ペンを持ち変えるのもひと苦労。数年前には車いすに座ることすら難しくなり、純子さんは、このまま描けなくなるのではないかと不安に襲われたといいます。

(母・純子さん)
「日々違うんです状況が。今日は描ける、でも明日描けない、明後日は描ける…みたいな。そこに自分の気持ちを追いつかせるのに必死なので、日々安定した気持ちで接するというのはあまりないです」