こうした中、令和3年7月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されましたことは、まさに万感の思いでありました。登録までの長い道のりを応援してくださった県民の皆様方をはじめ、全ての関係者の皆様方に心から感謝申し上げたいと思います。縄文遺跡群は縄文の人々が自然と共生をしながら、ともに支え合い、平和に諍いなく生きたことを物語る1万年以上に及ぶ軌跡であり、今を生きる私達への大切なメッセージであると思っております。その顕著な普遍的価値を守り、次の世代にしっかりと継承していきますとともに、多くの方々が縄文遺跡群に足を運び、理解を深めていただけるよう引き続き、本県が中心となって、関係自治体とともに、より一層の取り組みを進めていくことが重要と考えております。

 私は今期、5期目をスタートさせるにあたり、知事就任以来、チャレンジし続けてきた経済を回す取り組みの成果が、観光をはじめとする各分野で着実に現れ、また、本県の多様性と可能性を示すための様々な段取りも整いつつあると考え、今期を知事としての集大成すると、政治家としても心に決め、臨んできたところでありました。そうした中、令和2年に入りまして、誰もが想定し得なかった新型コロナウイルス感染症への対応が始まり、地域経済や県民生活にも大きな影響を及ぼしたところであります。また、これまで築き上げてきたものが全て無に帰してしまうではないかと自分自身、大変危惧をしたところでもありました。
 つい先ほど、大韓航空機が2年10ヶ月ぶりにチャーター便としてありますが青森空港に戻ってきて、本当にもう胸が熱くなったところでありました。なぜならば、特に観光分野において、2019年には外国人延べ宿泊者数が過去最高を更新し、震災前の5.7倍と本当に大幅に伸びる状況であったわけでございますが、国内観光客の来訪が落ち込む冬季も含めて、閑散期にもおいでただける、そして、その経済の好循環が拡大しつつあった本県のインバウンド需要がこのコロナにおいて全て一気に地に落ちたということは、私自身大変な衝撃でありました。その際、脳裏を去来いたしましたのは東日本大震災でありました。
 県民の長年の悲願でありました平成22年12月の東北新幹線全線開業後まもなくの23年3月11日、東日本大震災が発生し、本県も大きな打撃を受けました。あの日、災害対策本部室でテレビに映し出される各地を襲う大津波の映像を見ながら、とにかく逃げてくれと祈ったこと、また、その夜、停電が続く中において、被災市町村からの毛布や食料品、燃料、お湯などの支援要請に応えるべく奔走したこと。そして翌日訪れました八戸と被災地の惨状、今でもこのことは、昨日のことのように思い出されます。こうした中、地域住民の方々がお互い支え助け合っている姿に、地域の強い絆、そして私達青森県民の底力を改めて感じ、私の方がむしろ元気、そして勇気をいただきました。