「共通担保資金供給オペ」拡充 日銀の狙いとは?
赤荻歩キャスター:
今回の会見でも。YCCを止めない、指値オペを続けていくことは大丈夫なのか?といった質問が出ていましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?
大和証券チーフエコノミスト 末廣徹さん:
総裁から「実は問題なんですよ」とは、なかなかならないわけですね。ただ今回、「共通担保資金供給オペ」の拡充を日銀は発表しました。この発表に、私は日銀がちょっと限界も感じているのかな、と思いました。
赤荻歩キャスター:
この「共通担保資金供給オペ」。一定の担保を裏付けに、銀行などに資金を供給し、国債の購入を促すということですが、この拡充とは、どういうことなのでしょうか?
大和証券チーフエコノミスト 末廣徹さん:
日銀が金利を上げるんじゃないかという思惑が市場で生じているので、黒田総裁が“金利は上げません”と言ったところで、市場は「本当なんですか?」って話になってしまうので、何か金利を落ち着かせるような政策をセットにして発表しなけらばいけなかったんだろうと、予想できます。
この「共通担保資金供給オペ」を拡充し、言葉だけじゃなく、行動で示したので、これも含めて18日はマーケットが1回落ち着いたといういう形になってます。
この「共通担保資金供給オペ」とは何なのかということなんですけども非常に簡単に言うと、日銀と取引のある金融機関に対して、金利を低くお金を貸してあげる、資金供給するということです。
「共通担保資金供給オペ」を拡充する日銀の狙いについて説明すると、例えば貸付利率0%で、5年間お金貸しますよって言われたら、じゃあ何にそのお金使って投資しようかな?ってなるわけじゃないですか、銀行からするとお金を安く借りられたので、国債を買おうかなとなれば、日銀が国債を買わなくても、世の中の銀行を使い国債を買ってもらって、金利を抑えることができるかもしれない。こういった効果が期待できる政策なんです。
この拡充によって、なぜ日銀の限界が見えたのかというと、この政策って日銀にとって非常に都合がいいんです。
先ほど「日銀は何兆円も国債を買ってもつのか?」という話がありましたけど、この政策というのは日銀が国債を直接買うのではなく、市中の銀行に国債を買ってもらうっていう政策なので、日銀は直接リスクを取らないんですよね。
日銀はお金を貸して、銀行に国債を買ってもらうということなので、ある種、最終的なリスクは銀行に取ってもらうということなんです。
日銀が一部の国債を買いすぎていて買い占めてしまっている。その結果、市場機能が失われてるといった問題点もあって、日銀はそこに限界を感じていきているので、日銀が自分で買う形で金利を抑えるんじゃなくて、世の中の銀行に買ってもらう政策を今回拡充した。日銀の国債購入は限界に近いと日銀は考えているのではないか?という読み方もできるんですよね。
赤荻歩キャスター:
日銀の国債保有割合は50%を超えてきたということで、リスクの多くを日銀が背負っている。そこで、安い金利でお金を貸します。使ってくださいねと言っても、銀行が本当に国債を買ってくるかどうかわからないですよね?
大和証券チーフエコノミスト 末廣徹さん:
そうなんですよ。銀行が安い金利でお金を調達できたとしても国債を買うとは限らないですよね。当然。国債ってのはほとんどリスクがなくて現状10年金利は0.5%ぐらいで18日まで推移しててですね、例えば0.4%で日銀からお金を借りて0.5%の国債を買うっていうのは、ほぼどっちもリスクがないわけですから、無リスクで0.1%利ざやが稼げるという意味では国債を買うインセンティブにはなるわけですけど、ちょっとリスクを取って違うマーケットで勝負しようかなって話は当然出てくると思うので、効果がどこまで得られるのか、これはやってみないとわからないと思います。
黒田総裁も色々今様子を見てるという発言もあったかと思うんですけれども、これがあまり効果がないって話になるとまた金利が上がっていって、結局日銀は次の手はもうないだろうという思惑が生じると、落ち着かないマーケットになる可能性はあるのかなと思いますね。
赤荻歩キャスター:
そもそも市場機能の改善のために、長期金利の変動幅を拡大をしたという話でしたが、改善に向かっているんですか?
大和証券チーフエコノミスト 末廣徹さん:
あまり改善してないっていうことだと思います。金利の変動も大きくなりましたし、結局、レンジを拡大しても、上限の0.5%に張り付いてしまう状況になってしまいました。それを解消するために、世の中の銀行に国債を買ってもらいやすくするっていうことですよね。でもそれって本質的には、より日銀が市場に介入してないですか?
確かにこの「共通担保資金供給オペ」はすごく強力なツールなので、金利はしばらく落ち着くかもしれません。でもその落ち着きというのは「市場機能」なんですか?という疑問にぶつかります。もちろん「市場機能」について定義があるわけではないので、哲学的な話になってしまいますけど、考え方によっては日銀の介入がより強まって市場機能を悪化しているというふうにも言えるので、だから「問題は先送り」なんでしょうね。市場機能に関してもですね。
(TBS NEWS DIG「経済の話で困った時にみるやつ」より一部抜粋)