ふだんはぜいたく品、非常時はインフラ
ところで、アメリカでは大きなボトルの水を事業所や家庭に配達する商売が、100年以上前からありました。日本の家庭に広まったのは、それよりずっとあとです。なぜ遅かったのでしょうか。
鍵は、順番です。アメリカでは、近代的な水道の消毒が各都市へ広がる前、あるいはその途上から、水を売り届ける事業が成り立っていました。日本は逆で、1987年度末の時点で水道の普及率はすでに93.9%。ほぼ完成した水道インフラの「あとから」、お金を取る水の市場をつくる必要がありました。しかも日本では、家庭用の浄水器が1980年代から先に普及しています。1984年には年間の販売台数が135万台を超えた、という業界団体の記録があります。水道水の味やカルキ臭が気になっても、数千円の浄水器を付ければ、ある程度は解決できてしまう。水道水への不満の受け皿には、宅配水よりも先に、手軽な浄水器がなっていたのです。
水道が優秀な国では、水は必需品というだけでは売りにくい。だから日本の水ビジネスの歴史は、味、健康、温水冷水の便利さ、子育て、そして防災と、水道水にはない意味をあの手この手で積み上げてきた歴史でもあります。
そして最後のピースが、災害です。水道は、地震で止まります。そのときに、密封されていて、賞味期限が長くて、家に置いておける水は、飲み物というより家庭の備蓄になります。実際、ミネラルウォーター類の国内生産量と輸入量の合計は、東日本大震災があった2011年に、前の年より26.0%増えました。
ふだんはぜいたく品、非常時はインフラ。日本の水市場は、この2つの顔を持っていることで成り立っているのだと思います。
<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年8月3日配信『「水」こそマーケティングの教科書である:水と電気とAIとインフラの話 #コムギコ #88』から抜粋してまとめたものです。














