転機になった、1996年の小型ペットボトル解禁
日本の水市場にとって、大きな転機は1996年です。
ペットボトルは1982年に清涼飲料への使用が認められましたが、業界はゴミ問題への配慮から、1リットル未満の小型ペットボトルの使用を自主的に控えていました。輸入品には500ミリリットルの商品もありましたが、国産の小型ボトルが店頭に並ばない状態が、10年以上続いたのです。
この自主規制が1996年4月に廃止されると、500ミリリットルのペットボトルが、コンビニと自動販売機に一気に並びます。ここで水には、「家に置いておく重い買い置き」に加えて、「個人がその場で買って持ち歩く飲み物」という顔が生まれました。市場は1982年から1995年のあいだにも7倍以上に伸びていましたが、持ち歩ける容器の普及が、その後の需要をさらに押し広げていきます。
コンビニの棚では、水はジュースと競争している
では、なぜ水道水が飲めるのに、水が売れるのでしょうか。答えのひとつは、比べる相手が変わったことにあります。
家の中では、ボトルの水は水道水と競争します。この勝負は、正直、分が悪い。ところがコンビニの棚や駅の自動販売機では、ボトルの水は、ジュースやコーヒーやお茶と競争しています。「家ではタダ同然の水にお金を払うのは高い」ではなく、「無糖でゼロカロリーの飲み物としては、むしろ安い」。実際、コンビニの棚では、水はお茶やジュースより手頃な値段で置かれていることが多いはずです。
持ち歩ける水は、水道水の高級版としてではなく、いちばんヘルシーで、いちばん手頃な清涼飲料として売れている。土俵が変われば、値段の意味も変わるということです。














