甲子園出場よりも嬉しいのは“このチームでまた練習ができること”

 15年ぶりの現場復帰で聖地の甲子園への切符を手にした小田浩監督。「野球の監督は(生徒の)ゴールは3年後の姿だけど、校長では3年後だけじゃなくて10年後、20年後の姿を意識してやってきた。ただ教えるのではなく『ポータブルスキル』と言っているんですけど、野球で培った考え方、リスクマネジメントとかの思考のプロセスをしっかり教え込んで勉強でも活かせるし、将来の仕事でも活かせるというスタンスを保護者にも説明してきた。もう孫みたい(な年齢差)ですけど、地元福山の子たちの集まりで、3年生17人全員がメンバー入り。個人的なエゴは全く出すこともなく本当にいいチーム、いい組織になった。だから甲子園(出場)もですけど、このチームでまた練習ができるのが1番嬉しいですね」と語ります。

甲子園出場の喜びをあらわにする市立福山ナインと小田監督

 その練習で握るノックバットは、総合技術時代の教え子だったソフトボール部の女子部員が去年、還暦祝いでプレゼントしてくれたものでした。もらった時には「監督になる気はなかったのに…どうせいと!?」と戸惑いを隠せず。「15年ぶりに握ってボールが飛ばないので生徒に申し訳なく笑われている」と言いますが、わずか4ヶ月で甲子園へ導く魔法のような道具へと変わりました。

 2011年のセンバツ以来となる甲子園でも「背伸びをせずに、地に足をつけて、これまで通り淡々と…」と話す小田浩監督。そして「福山市を驚かす」という合言葉を4ヶ月で実現しましたが、夢舞台を経験する部員たちには「将来、福山市を支えてくれる人材になってくれる」ともっと先の未来の姿を想像しています。

【筆者プロフィール】
石田 充(いしだ・みつる) 中国放送(RCC)アナウンサー。2007年に入社。アナウンサーとして、広島東洋カープの2017年、2018年の優勝試合を実況。その他、Jリーグ(サンフレッチェ広島)、駅伝、ラグビーなどテレビ・ラジオのスポーツ中継を務めながらディレクターとして高校野球などのアマチュアスポーツを取材。ドキュメンタリー制作・撮影・編集もこなす。