長崎県内経済の2023年のポイントの一つが『人手不足』です。いま人手が足りていないのは従業員だけではありません。
地域の経済や雇用を支える中小企業の中には、経営余力があるにもかかわらず“後継者がいない”との理由で『あきらめ休廃業』を選ぶ企業もあります。
長崎の暮らし経済“ウイークリーオピニオン” ──
平家 達史NBC論説委員(以下【平】)とお伝えします。

経営者も人手不足?“事業承継”県内の現状は

住吉 光キャスター(以下【住】):
帝国データバンクによりますと、長崎県内企業の“後継者不在率”は調査を開始した2011年以来、初めて60%を切り、“改善傾向”にはあるものの、およそ6割の企業で後継者は“いない”または“未定”ということなんですよね。

【平】県内の後継者不在率の推移を見てみると、ここ1~2年は改善が進んでいて、『事業承継の重要性』が企業に認知されつつあるとも見てとれます。

一方で去年の数字を九州7県で見比べてみると──
長崎県(59.9%)は、大分県(65.6%)、福岡県(60.2%)に次いで3番目に高くなっています。改善しているとはいえ、長崎は“まだ高い水準”であるというのが実情です。

【住】企業の廃業は“雇用がなくなる”といった直接的な影響はもちろんですが、取引していた企業は新たな取引先を探す必要が出てきたり、私たち個人も馴染みの会社やお店がなくなったりと地域にとっても大きな損失ですよね。対策は進んでいるのでしょうか?

【平】ひとつは国が全国で展開する『事業承継・引継ぎ支援センター』というものがあります。

“後継者いない事業者”と“創業者” マッチング 相談は右肩上がり

長崎商工会館に事務所を置く事業承継・引継ぎ支援センター。

県内企業の“事業承継”に関する相談の受け付けや、“外部人材とのマッチング”などの業務を行っています。
設立から8年で相談件数は右肩上がりです。

長崎県事業承継・引継ぎ支援センター・永野厚統括責任者:
「県内の事業者さんは、“高齢化”がかなり進んでいまして、全国でもトップレベルの年齢に達してます。
(後継者の)選択肢をどうやって決めたらいいのかということで非常に悩んでいる方、それから相談相手がいないという方もいらっしゃいますし、相談しても一体どこから相談していいのかと、こういった悩みを抱えている方が非常に多い状況です」

センターがいま力を入れている業務の一つが『後継者人材バンク』の活用です。

後継者人材バンクとは “後継ぎがいない事業者” と “新たな事業に挑戦したい人材” を引き合わせる取り組みで、『後継者問題の解決』と『創業の促進』を図る狙いがあります。ここ数年はU・Iターンを含めた移住者の登録も増えているといいます。

長崎県事業承継・引継ぎ支援センター濱里 幸司さん:
「ご親族の方が会社を継ぐにしろ、第三者へ承継するにせよ、やはり時間がかかりますので、早めに着手いただいて、計画的にやっていただくということも合わせてセンターとしての役割ではないかなと考えております」

【住】設立から8年ということで、後継者問題を抱える企業の支援体制が整いつつあるのかなという印象ですが、当事者である経営者の皆さんは事業承継に対してどのような認識をもっているのでしょうか。