今、投げてみたいのは“スラーブ”

なぜこれほど、ダルビッシュは変化球へのこだわりが強いのか。その原点について、3年前のインタビューで語っていた。

ダルビッシュ投手(当時34歳)
「小学6年生の時に(コーチに)『変化球をみんな投げてみろ』って言われて。自分は自信があったんですけど・・・カーブを投げたら言葉は悪いんですけど、“しょんべんカーブ”っていう『キレのないカーブやん』って言われた時に凄くショックだったんですよ。俺の変化球は全然ダメだっていうのがすごくわかって、そこから(変化球に)執着するようになったんですよね。好きだったのが“好き+執着”になったのでこだわりが強くなったと思います」

川﨑さん:
また2023年シーズン、こういう球を投げたいなとか、そういうイメージって沸いてますか?

ダルビッシュ投手

ダルビッシュ投手:
あります!“スラーブ”にするというか・・・。

“スラーブ”とはスライダーとカーブを合わせたような変化球のこと。スライダーはストレートに近い軌道から打者の手前で鋭く曲がるボール。カーブは山なりに大きく曲がりながら落ちていくボールで、ストレートより遅く、打者のタイミングも惑わせる。

川﨑さん:
2022年、誰に(スラーブを)投げた時に1番いい球がいったか覚えてますか?

ダルビッシュ投手:
実は最後のナショナルリーグチャンピオンシップのフィリーズ戦の時に、2球くらい投げたんですよ。それが1番、僕は1年の中ですごく楽しかったですね。

その場面とは、2022年のダルビッシュ最後の登板となった0月24日(日本時間)のナショナルリーグチャンピオンシップ、パドレス対フィリーズの第5戦。4回、2016年のリーグ最多安打J.セグーラ(32)への1球目がスラーブだった。
真ん中から外角に落ちていく軌道にセグーラは体をのけぞらせた。
(川﨑さん、ダルビッシュ投手はがこの映像を確認)

川﨑さん:おおおおお!

ダルビッシュ投手:おっ!

川﨑さん:いい球!

ダルビッシュ投手:
これですごくいい感じで、気分良くオフシーズンに入れたんですよ。

川﨑さん:
これ凄いよね。今の反応見た?セグーラ。のけぞったよ1回、あのメジャーリーガーが!

ダルビッシュ投手:
自分の変化球に対してすごく厳しいんですよ。(普段は)全然いいとは思わないんですけど、これはやっぱり、ちょっといいなって自分でも思えたりするので。

好打者・セグーラが思わずのけぞってしまうほど、ダルビッシュの“スラーブ”は切れ味抜群だった。さらに“スラーブ”をより効果的に生かすための組み立ても見せた。1ボール1ストライクからの3球目は小さく変化するスライダーでファール。そして、4球目は3球目と同じコースから横に大きく曲がる“スラーブ”で空振りを奪った。

川﨑さん:
これよね!同じところからグイーンと曲げた。

ダルビッシュ投手:
今のは同じところから曲げましたね。

3球目と4球目は途中までほぼ同じ軌道だが、“スラーブ”は打者の手前で大きく曲がる。この変化の違いが打者を翻弄する。

新変化球“スラーブ”の握り方を披露

川﨑さん:
(ボールの)握りを教えてください。

ダルビッシュ投手:
(ボールを握りながら説明)斜めの“スラーブ”もスライダーと一緒です。

川﨑さん:
有くんは握りを教えてくれるけどやっぱり投げ方だから結局はね。いくら教えてもいいわけでしょ?

ダルビッシュ投手:
あまり握りってそこまで大きく関係ないと思いますね。どこにどういう感じでプレッシャーをかけているかとかの方が結構大事だったり。

ダルビッシュ投手

川﨑さん:
プレッシャーをかける?ボールの圧?

ダルビッシュ投手:
人はこうやってボールを握っていれば僕と宗さんでどこの指にどういう風に力がかかっているか絶対に違うんですよ。だから全然参考にならないんですよ。意外と握りって。

後編に続く