■「人生をかけた目標は・・・」只野さんの願い

副代表の今野憲斗さん(22)は只野さんの同級生。
あの日、迎えに来た母親と帰宅した直後に自宅で津波に襲われたが、間一髪
難を逃れた。
重圧を一身に背負ってきた只野さんの力になりたいとメンバーに加わった。

事務局長の尾形響聖さん(24)は、大川小で弟と妹を亡くした。
これまで弟や妹のことを人前で話したことはほとんどなかった。
集会直前まで不安な気持ちに支配されたが、只野さんら仲間の顔をみてパワーをもらい「大川に人が集える場所をつくりたい」と決意を述べた。

広報担当の佐藤周作さん(24)は大川の出身ではないが、震災直後から只野さんらと勉強会を共にするなど交流を持ち、同じ思いを持つ仲間として加わりたいと声を挙げた。

集会には石巻市の震災伝承の担当者も招いた。
大川小の津波事故を巡る裁判で石巻市と遺族が争った経緯もあり、お互いに複雑な心境も抱いていたが、何度も話し合いを重ねるうちに同じ方向を向いて歩んでいけると確信できた。
「記者の皆さんともざっくばらんに話す機会を増やして、より良い関係をつくりたいです」私にも微笑みながら伝えてくれた。

自分に出来ることは何か。只野さんがカメラの前で見せてきた前向きな姿だけではなく、これまで内に抱えてきた葛藤や苦しみも多くの人に知ってほしい。伝え続けなければと強く思った。

「本当は言うつもりはなかったけど、自分への覚悟を決めるうえであえて言おうと思います」

集会の最後の挨拶で、只野さんはこう切り出した。

「私の人生をかけた目標は、大川の地に新しい街をつくりたいと考えています」

初めて口にした新たな目標には、大好きなふるさとへの思いがあふれていた。

決意表明する只野さん


「いつの日か大川の地に若者が帰ってこられる街ができ、再び子どもたちが大川の豊かな自然の中で、自由に伸び伸びと命を育むことのできるふるさとを取り戻せると私は信じています」

震災から11年、仲間とともに新たな一歩を踏み出した。