417報を調査しなおすと…2000年を境に起きた「科学の罠」

研究者たちは、これまでラットの声を研究した「過去の論文」に含まれているデータを洗い直しました。産業技術総合研究所(産総研)の橘亮輔主任研究員がリードする形で、共同研究者たちは手分けをして、417報もの膨大な先行研究の調査を開始しました。


すると、グラフ化されたデータから興味深いデータが浮かび上がりました。
1990年代までは、研究者たちは実際にラットが鳴いた「実測値」を細かく論文に記載していました。しかし、2000年を過ぎたあたりから、判で押したように「22kHz」(不快)か「50kHz」(快)としか書かれなくなっていたのです。

     縦軸がラットの鳴き声の高さ、横軸が論文の発表年代を示す。1990年代までは様々な鳴き声が記録されているが、2000年ごろを境に50キロヘルツと22キロヘルツとしか書かれなくなっている(研究チームの論文「Beyond dichotomy: Diversity of ultrasonic vocalizations in rats」より )

つまり、実際の声の高さに関係なく、いつの間にか「22kHzか50kHz」という数字が「便利な分類ラベル」として定着してしまい、中間の声の存在がデータ上から見えにくくなっていたという実態が明らかになったのです。

先入観を取り払ってすべてのデータをマッピングし直すと、そこには従来の2つの箱には収まらない「第3のグループ」の声がはっきりと存在していました。