「よかれ拡散」で善意の第三者が狙われている
いま最も注意すべきは、被災地外にいる善意の第三者による「よかれ拡散」である。「家族が下敷きになっている」「子どもが閉じ込められている」という投稿を見ると、多くの人は「拡散すれば助かるかもしれない」と考える。
だが虚偽であれば、自治体、消防、警察、自衛隊に不要な確認作業を発生させ、本当に助けを必要とする人への対応を遅らせる。実在する住所や個人情報が使われれば、無関係の人も巻き込まれる。
巧妙なデマには、2つの特徴がある。第1に、あいまいさを解決してくれるように見える。住所、氏名、人数、時刻などが具体的に書かれ、断定調で語られる。
第2に、重要さを際立たせる。人命、子ども、高齢者、切迫した時間、怒りや恐怖を誘う表現が使われる。これは詐欺メールと同じである。受け手の善意や正義感を利用して、拡散させるように作られている。
だからこそ、災害時には「自分は助ける側だ」と思った瞬間が危ない。「助けたい」という気持ちは尊い。しかし、未確認情報の拡散は支援ではなく妨害になることがある。善意を行動に変える前に、情報の裏を取る-ファクトチェック-のブレーキが必要である。
一般の人が持つべき2つの問い
一般の人に求めたいのは、専門家のような精密な検証ではない。まずは2つの問いを持つことである。「これは本当か?」「これは自分が広めるべき情報か?」。
そのうえで、2種類のファクトチェックを行う。1つは、内容そのものをチェックする「内在的チェック」である。表現が不自然・極端ではないか。日時や場所に矛盾はないか。感情を過度にあおっていないか。画像や動画が古いものではないか。
もう1つは、外部情報で確かめる「外在的チェック」である。発信者は誰か。普段どのような投稿をしているか。政府・自治体、警察・消防、テレビ・ラジオ・新聞などの「公式情報」でも確認できるか。
その結果、「根拠がわからないものの拡散には自分は加担しない」と判断する。これが最も重要な行動である。心配な場合も、SNSで広げる前に、身近で信頼できる人に相談する。知らない人の知らない場所の救助要請を、善意だけで「よかれ拡散」しない。このルールを平時から決めておく必要がある。そしてこれが「防災リテラシー」(災害を事前に知り、備え、事後に適切に行動できるような総合的な力)につながる。














