セルフディスタンシングとは何か

心理学の分野には、セルフディスタンシング(self-distancing、自己距離化)という概念があります。自己から心理的に距離を置くことで、感情調節・自己制御・行動変容に肯定的な効果をもたらすことがわかっています。

その典型的な実践手段が「三人称視点から自己の体験を観察していることを想像する」ことです。

ただし、過去の体験を振り返るときならともかく、現在進行中の体験の最中に三人称視点から自己を観察することは容易ではありません

ここにVRの可能性があります。

バーチャル空間では、ユーザーはあたかも自分の身体のように感じるアバターとして存在し、加えてユーザーの視点を任意の位置に設定できます。体験の最中にリアルタイムで三人称視点を実現できる環境として、VRはきわめて適しています。

これまでの研究でも、バーチャル空間に三人称視点を適用した事例は存在しました。

しかし、その多くは単独のゲームやスポーツといった個人レベルの活動への影響に焦点を当てており、集団意思決定など集団レベルの活動への影響はほとんど明らかにされていませんでした。