「辞める理由を探していた」ひざから崩れ落ちた夜の決断
その背中を押したのが、たまたまつけていた深夜の野球ニュース番組で聞いた、元プロ野球選手・下柳剛さんの言葉だったという。「“辞める理由じゃなくて、やる理由を探しているだけ”という言葉を聞いた時に、膝から崩れ落ちるくらい泣いてしまって。もしかして私も辞める理由を探していたのかなと気づいたんです」。その瞬間、「自分の本音から逃げちゃいけない」と強く感じたという。
再び役者として歩み出した赤間を、家族は静かに支えた。無名塾出身で俳優の夫は言葉こそ多くなかったものの、「多分“良かったね”と思ってくれていたんじゃないかな」と回想。「“母親なんだから”という言葉は一つもなかったので、後ろ髪を引かれることなく進めたのはありがたかったです」と、当時の環境を振り返りつつ、感謝の言葉を口にする。
そんな再スタートのさなか、赤間さんの人生は大きく揺さぶられることになる。
順調に見えた再スタートの中で、乳がんという大きな出来事にも直面する。「“子どもの成長を見られないかもしれない”“志半ばで終わるのかもしれない”と、二つのことが浮かびました」。その経験は、自身の価値観を大きく変えた。
「自分の体のことだから全部理解したい」と考え、すぐには治療に入らず徹底的に調べ尽くし、代替療法も調べた上で選んだのは、標準治療。「自分で考えて納得して決められたことが大きかった。もし副作用があっても、“あれだけ考えた結果だ”と思えるので、人のせいにしなくて済むんです」。
“時効”というテーマが核にある『田鎖ブラザーズ』にも、自身の経験は重なる。「“人生って終わるんだ”と実感できたことは、すごく良かったと思う」と明かし、「終わりがあるからこそ、どれだけ花を咲かせられるのかを考える。もし200年生きられるとしたら、こんなふうには思えないんじゃないかな」と、前を向く。
そして、治療でもそうだった“徹底的に”向き合うその姿勢は、芝居にも通じている。
「役も自分のものなので、絶対に後悔はするんですよ。でも“あの時はあの選択しか思いつかなかった”と思えるところまで考えたい」。どんな撮影現場でも自主稽古を欠かさず、「やるだけのことはやった」と思える状態で臨む。「稽古したことが通用しないこともありますが、それでもやっぱりやっておかないと怖くて撮影現場に行けないんです」と、実直に向き合い続ける。
俳優として、一人の人間として。「自分で考えて、自分で行動して、自分でつかみ取る」という姿勢を貫いてきた赤間さん。『田鎖ブラザーズ』での演技にも、その姿勢は確かに息づいている。














