万博終了前の対話 不信と絶望

横たわる、圧倒的な「分断」の現実。それでも、万博会場では、ふたりの当事者がそれを乗り越えようと、もがいていた。

「万博が終わる前に話してみないか」。自ら歩み寄ったイスラエル人のオフェルさんと、それに応えたパレスチナ人のラファットさん。ふたりの対話は、こうして始まった。

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「もし新しい道を始めるとしたら、パレスチナはイスラエルとの関係改善のために何ができますか?」

ラファット・ライヤーンさん(パレスチナ人)
「それは私たちがずっとやってきたことです。だがイスラエルが何も応えていない。いま西岸地区の人たちはもう和平を信じていない。イスラエルから和平の意思を感じないからです」 

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「それはこっちも同じです。イスラエルでも23年10月7日の攻撃以降、誰も和平を信じなくなった」

ぶつかり合う、不信と絶望。それでも「ひとりの市民」として。ふたりは、分断の先にある「平和への糸口」を探り始める。

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「イスラエル国内にも2つの立場があって、和平派も戦争支持派もいる。でも、パレスチナから見ると『イスラエル人はみんな戦争を望んでいる』と思ってしまう。でも、それは違う。パレスチナ人もみんな戦争を望んでいない。問題は、その声をどう表に出すかだ。何かできるのか」

ラファット・ライヤーンさん(パレスチナ人)
「お互いの立場から対話を続けていかなければなりません。対話を続けるのです。友人や同僚にも伝える。平和について語り続ける。平和こそが最善の選択なんだと人々に信じてもらう」

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「それが大事です。その通りです。こうした対話が必要なんです。声を出し続けることが」

平和への思いは、確かに重なった。けれどラファットさんには、どうしても突きつけたい「現実」があった。

ラファット・ライヤーンさん(パレスチナ人)
「イスラエルには平和を目指す政府が必要です。ひとつ言わせてほしい。両者の間でこれほど衝突が絶えないのは、イスラエル軍や入植者がパレスチナ人と直接向き合う場所にいるからだ。市民への攻撃を止め、彼らが姿を消せば衝突はなくなる」

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「その通りです」

ラファット・ライヤーンさん(パレスチナ人)
「私がイスラエルの話をしたのは、現状を変えられるのはイスラエルだからだ」

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「ええ、イスラエルは『強者』の立場にある。だからこそ責任を持たないといけない。まずはお互いに自分の側の人々に働きかけていく。この対話が希望の一歩になればと願います」

ラファット・ライヤーンさん(パレスチナ人)
「本当にありがとう」

ビリク・オフェルさん(イスラエル人)
「会えてよかった。また会いましょう​。イスラエルで。あるいはパレスチナで」

ラファット・ライヤーンさん(パレスチナ人)
「願わくば、平和が訪れたときに。きっと近い将来にね」

ふたりの万博も、終わった。万博会場が解体されていく。