第31回全日本高校女子サッカー選手権の決勝が、8日にノエビアスタジアム神戸で行われる。今大会は、女子サッカーを盛り上げるための新たな試みとして、決勝当日、同会場でWEリーグ第8節のINAC神戸レオネッサ vs アルビレックス新潟レディースが開催される。
元なでしこジャパンで大宮アルディージャVENTUS所属の鮫島彩選手(35)は常盤木学園(宮城)時代に同大会に3度出場。いずれも決勝で涙を呑んだが、その後は日本代表として2012年のW杯で優勝を果たすなど世界の舞台で活躍した。選手権を経て世界のトップで戦った鮫島選手が、選手たちへメッセージを送った。
Q.高校女子サッカー選手権はどんな舞台?
鮫島選手:
非常に楽しめた大会の印象ではあるんですけど、そこで優勝するために全てを、1年間懸けて臨んでいる大会ですし、(高校のある)仙台での寮生活で、親元を離れていた。両親に試合を見せられる機会だったりもしたので、そういった意味ではすごく楽しめた大会でした。ただ、結果的には3年ともシルバーコレクターで終わってしまったので、一番欲しいメダルは手にできなかったという悔しい思い出もある大会です。
Q.決勝の舞台の印象は?
鮫島選手:
決勝の舞台は2年生、3年生の時はどちらも逆転されて負けたんですけど、特に3年生の時は3-0から追いつかれて、PKで負けた試合展開で。今回の男子W杯を見ていてもそうなんですけど、大事な試合になってくると最後まで何が起こるか本当に分からないなっていうのは身をもって感じた、そういった決勝だったかなと思います。
Q.WEリーグに生かされている?
鮫島選手:
あの試合後からは今のWEリーグだけじゃなくて、その後の自分の戦う試合に関しては、どれだけの点差をつけて勝っていようと、流れが一気に変わる瞬間がサッカーにはあるので、そういった流れの大事さを非常に学びました。それを試合の中で読むチカラだったり、試合の戦いの中に生かしていく重要性は、まだまだ出来ていない所もこの年齢になってもあるんですけど・・・非常に学びました。
Q.3年間通して楽しかった思い出は?
鮫島選手:
基本的には私の高校は走りが多い、常盤木は走りが有名な高校だったので、走った記憶がほぼ、なんですけど・・・。それが今となっては(当時の)メンバーで集まった時に「あの頃ね」みたいな感じで楽しい思い出として残っているので、あれだけ厳しい練習を仲間と一緒に乗り越えたっていうのが。当時は楽しいって思いを感じていたかどうかというと感じて無かったんですけど、あの道を選んできて良かったなって今は感じるので、それも一つの、今となっては楽しい思い出だなって思います。
Q.辛かった思い出は?
鮫島選手:
走りですね。決勝では負けてしまいましたけど、そこまでは自分たちが主導権を握って、自分たちのやりたいサッカーを出来るような、そういう強豪校に入らせてもらっていた。大会中は楽しめていたので、辛い思い出は走りです。
Q.阿部監督は昔よりは走らせない?
鮫島選手:
そうなんですよ。この前お会いしたんですけど、自分たちが一番嫌いな走りを今はやっていないそうで、先生絶対やった方が良いですよってあれはやっておいた方が良いって念を押してきたんですけど、丸くなられたんで大分。
Q.どのような走り?
鮫島選手:
大圓寺というお寺、高校からバスで10分くらいの所にある。そこに行って頂上が見えない1番下から上って下ってを10往復やるっていうので、先生が一番頂上で見張っているんですけど、それが今までのサッカー人生全部含めて一番しんどかった。あれはもう二度と出来ないです。ダントツであれが一番きついです。階段が長すぎて、一番下が先生から見えないんですよ。本当に長いので。下の方だけちょっと歩いちゃったりとか、見えない所は。しんどすぎて。先生の姿が見えてきたら走るとか、そうしないと乗り越えられないほどの階段の数でした。
Q.高校の時は攻撃的なポジションだった?
鮫島選手:
そうですね。FWかサイドハーフで、背番号も10番をつけさせてもらって。
Q.コンバートしたきっかけは?
鮫島選手:
コンバートしたきっかけはノリさんがサイドバックのピースを探していてちょうど。私はテクニック系でなくて身体能力とかスピードが特徴なので、そういった意味で試してみたんだと思います。
Q.サッカー部で得たものは?
鮫島選手:
得たものはたくさんあるんですけど、まず一つは私の場合は寮生活をしていたので、全て自分たちでやらなければいけないっていう環境の中で、両親に対するありがたさをそこで非常に学べたなと。大変なことも寮生活の中でたくさんあったので、忍耐力っていうのは、高校3年間で非常に強く身に付けたものかなって思います。ピッチ上では監督の阿部(由晴)先生が自分のために頑張るんじゃなくて、チームのために頑張れっていうのを、走りのフィジカル走の最中にも声掛けをしてくれていた時期があって。試合中の全部のメニューに関して、自分の為というよりはどれだけチームに貢献できるか、自分の能力を向上させていけるかっていう考え方をする習慣がそこで植え付けられたので、団体競技でやっていくうえでは非常に重要だったのかなとは思います。
Q.どのような思いでサッカーに取り組んでいた?
鮫島選手:
常盤木の部活のルールとして上下関係がゼロ。もちろん先輩のことも呼び捨てで呼びますし、タメ語ですし。すごくまとまりが良いというか、仲が良いというニュアンスとはちょっと違う、もちろんそこにはポジション争いのバトルもあって、皆絆が深くてという部活動だったので、先輩に対して、仲間に対して、この大会優勝を一緒に経験したいな、とかメダルをかけてほしいなとか、そういう思いはすごくあったと思います。
Q.一番支えてくれた存在は?
鮫島選手:
やっぱり同じ部活動のメンバーが家族以上に常に寮生活でも一緒でしたし、24時間一緒だったので、どんな走りも、どんな練習も一緒に乗り越えてきたなっていう。支えあった一番のメンバーかなと思います。
Q.高校女子サッカーの経験がWEリーグに生かされていることは?
鮫島選手:
高校の3年間で精神的にも、身体的にもタフさを身につけられたと思っているので、そのタフさはこのリーグをシーズン通して戦うにあたって、非常に生きている所だと、それは強く思います。
Q.高校女子サッカーの魅力は?
鮫島選手:
クラブユースにあって高校女子サッカーにないものって何だろうって考えたときに、クラブは上に上がるための、育成するための場所だと思うんですよ。だからどれだけユースからトップに選手を上げられるのかとか、その後の活躍に生かしていけるのかっていうそういう、育成の意味合いが強い場所なのかなって思うんですけど。
高校サッカーは、もちろん上を目指している選手はたくさんいると思うんですけど、その3年間で選手権に対してそこで優勝する、良い結果を残すという所にフォーカスしている部分が強いと思うので、そこに懸ける選手たちの想いだったり、泥臭いプレーは高校サッカーならではだと思うので、そこは外から見ていても、選手権をテレビで見ていても、胸が熱くなるものがありますし、プレーヤーも見る側としても一番の魅力なんじゃないかと思います。
Q.高校生に伝えたい想い、アドバイス
鮫島選手:
私自身が選手権の決勝戦で経験させてもらったように、本当にサッカーって色々な流れが交錯する中で、最後まで何が起こるか分からないので、結果を恐れずにまずは最後のホイッスルが鳴るまで、全力で戦うことが一番だと思いますし、それがどんな結果になろうとも必ずその後の人生につながっていくものだと思うので、まずは自分のベストを尽くすっていうのに全力を注いでほしいなって思います。
Q.高校女子サッカーを一言で表すと
鮫島選手:
ひたむきさかな。1年のあの大会に懸ける想いが強い、高校サッカーならではのカラーだと思うので、プラスそういう姿があってほしいなっていう願いも込めて、ひたむきさで。
Q.母校に向けてのメッセージ
鮫島選手:
私たちが高校サッカーをやっていた頃と違って、あの頃って神村学園か常盤木学園か鳳凰かっていう時代だったんですけど、今は全体的にレベルが上がって、レベルが高い高校が増えたのかなっていう印象があるので、より自分たちの時代よりも結果を残すのが難しくなっていると思う。母校の選手たちが活躍するのは、非常に嬉しいですし、常盤木出身の熊谷紗希(32、バイエルン)だったり、まだまだトップレベルで頑張っているので、お互い良い相乗効果じゃないですけど、そういうのを生み出していけたらと思うので、是非頑張って、サッカーを楽しんでもらいたいなと思います。
Q.WEリーグの個人の目標とチームの目標
鮫島選手:
チームとしては昨年以上の順位を残すのが目標にあるので、今の時点(取材時点)ですけど、昨年の勝ち数と一応もう並びはしたので、ただ昨年が少なかったなって思いなんですけど、こっからがまだまだ長いので、そこでもっと勝ち点を積み重ねていきたいなっていうのと、そのためにまずは守備として、失点しないことはマスト、失点を減らすっていうのはマストだと思うので、自分のポジションとして、守備の安定性はチームメイトと一緒にもっと増していけるようにしたいと思っています。
【試合日程】
■2023年1月8日(日) 会場:ノエビアスタジアム神戸
◆第31回全日本高校女子サッカー選手権大会 決勝戦
午後2時10分キックオフ(予定)
◆WEリーグ第8節
INAC神戸レオネッサ vs アルビレックス新潟レディース
午前10時30分キックオフ(予定)