文書に弁護団が異議…裁判官は?
冒頭でふれたように3月12日の法廷では、それまでに提出された証拠と本人の尋問を踏まえて、双方が最後の主張をして結審することになっていた。ところが、国側は3点の文書を新たに提出した。その中身とは…。
1つ目は、東京法務局での日本語能力試験の一般的な運用として、採点は当事者のいない別室で行われ、結果は開示しないという報告書。2、3点目は、これまで再三、提出を求められながら国側が応じなかった男性の解答用紙だ。最終段階でようやく出されたが、ほぼ全面黒塗りだった。
これによって国側は「試験の採点が面前で行われ点数を見た」という男性の法廷証言の信用性を崩そうとした。だが、国側は当初、書面で「原告の面前で採点が行われており」と認めていた。にもかかわらず理由を示さず、ただ「上記主張は誤りであった」と翻した。
弁護団は、この3点を証拠として取り調べることに異議を唱え、応酬が続いた。
川勝氏「前回の尋問結果を踏まえて、原告が述べたことを弾劾する」
「弾劾」とは証言の信用性を低下させることを意味する。
岡田裁判長「今の段階で出てくるのは、やや相当性に欠ける。(弁護団から)異議が出るとなると、そのまますんなり証拠調べは難しい。被告で(提出を)撤回されては?」
川勝氏「撤回は致しかねる」
岡田裁判長「立証趣旨は?」
川勝氏「原告が点数を見たというのは事実に反する」
関聡介弁護士「(解答用紙が)これほど全面的に黒塗りでは、必要最小限の証明力すらないと言わざるを得ず、取り調べに値しない」
川勝氏「代理人の感想に過ぎない」
審理が終結するはずの局面で突然、出された新たな文書…。弁護団があらためて反論や反証をするには一定の時間が必要で、そうなると、判決は遅れる。
民事訴訟法では、証拠は進行状況に応じて適切な時期に応じて提出しなければならないことになっている。タイミングが遅れた場合、裁判所が「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」として「これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたとき」は、却下して提出させないことができる。
最後に岡田裁判長が告げた。
「却下、弁論終結」
3点の文書が証拠とされることはなかった。

















