戦争の終結は見えるか――「お互いが勝利宣言」するシナリオ

イランの隣国イラクで取材を続ける現JNN中東支局長・増尾聡記者は、戦争終結の兆候について「残念ながら感じません」と率直に述べた。イラン新指導者にモジタバ師が選出されたことでこれまでの路線を継承していく見方が強く、また「さらに強硬になるのでは」との見方もある。対話への道筋は見えてこない状況だ。

ネタニヤフ首相は11日、イラン国民に向けて「これは一生に一度のチャンスだ」として蜂起を呼びかけたが、「国民が立ち上がって、体制転換の一役を担う、そういった動きはまったく見えてこない」と増尾記者は語り、アメリカやイスラエルが期待した動きはなく、事態は膠着している状況だ。

それぞれの「勝利」の定義を見ると、イランにとっては「負けなければ勝ち」であり、秌場記者は「今の体制が存続すれば、『大悪魔アメリカと小悪魔イスラエルの猛攻を耐え忍んだ』という勝利宣言になりうる」と語る。

アメリカは当初の体制転換目標から軌道修正し、

(1)イランのミサイル能力の壊滅
(2)海軍力の壊滅
(3)未来永劫核兵器を持てないようにする
(4)代理勢力による領土外への手出しをできないようにする

4つの目標を掲げている。トランプ大統領がこれらの目標を「達成した」と宣言すれば、「勝利」として戦争から手を引く可能性がある。

一方、イスラエルは“レジームチェンジ“が宿願であり、それを達成してこそ「完全勝利」だが、現状、実現は難しい。

イラン国内の声については、現体制の存続を願う声や、体制が変わることを望む声など、多様な声があるのは大前提、とした上で「アメリカやイスラエルが期待したような、国民から、内側からの動きが起きていないということは頭に入れるべき」と増尾記者は指摘する。いまの体制はそれほど弱っておらず、(たとえ蜂起しても)暴力によって弾圧されるのが目に見えている、というのが多くの国民の感覚ではないか、と推測される。

秌場記者は「今後、アメリカとイランがそれぞれ「勝った」と言い張って事態を収める、というのは一つのありうるシナリオ」と分析する。しかし、イスラエルがそれで満足するかは不透明であり、イランの体制転換が起きなかった場合、何年かに一度、大規模な衝突が繰り返される、かつてハマスとイスラエルの間で起きていたようなサイクルがイランとイスラエルの間でも繰り返される可能性も考えられるという。

アメリカ、イラン、イスラエル、3者それぞれの思惑が入り乱れている今回の戦争。ただ最大の被害者は、昼夜問わず行われる爆撃におびえ、時に巻き込まれて命を落とす両国の民間人ではないだろうか。先行きが見通せない戦争の先に、果たして何があるのか。為政者の思惑に国民が犠牲になることは、これ以上あってはならない。