福島県民と県外の人との温度差
約15年が経過し、震災後の数年間よりもテレビ各局の震災特番はかなり色が変わってきたかのように思う。「東日本大震災や原発事故を振り返り、継続している問題を伝える」というよりも、南海トラフ地震などに絡めて、震災はあくまできっかけにして「災害の時、どう対応すれば命が助かるか」という点に焦点を当てたような番組が多い印象だ。震災と無関係の地域の視聴率を得るための視点だと推察するが、地元としては違和感のある内容も少なくない。
弊社では「震災12年」の時には、政府が福島第一原発のアルプス処理水の海洋放出を予定している話題だけで55分番組を放送した。「処理水」については、ネット上の反応も様々で、県民と県外の人では絶対的な温度感が違っていた。
ネット上の反応を見ると、「科学的に安全なら流していい」「マスコミの報道が風評被害を招いているだけ」といった問題の本質に目を向けていない声が多い。極論すると「何か被害があっても自分には関係ないから」という印象も受けた。
処理水問題については我々自身も日々のニュースでは伝えきれていないと感じていたため、その時は思い切って「処理水問題」に絞った特番を制作することにした。
番組では、「処理水」とはそもそも何なのかという点から始まり、なぜ漁業者が反対しているのか、「関係者の理解なしには放出しない」という政府・東電と漁業者との約束の話、政府の広報の取り組み、実際に東京の人たちはどこまで知っているのか、市場関係者はどう評価しているのかというところまで描き、スタジオには風評被害調査の識者と政府の処理水小委員会の元委員を招いて展開した。
放出に反対するだけととられるような番組にはしたくなかったので取材と事実を重ね、多角的に客観的に描くことを心掛けた。海外の反応まで取材できればベストであったが、さまざまな事情からそこまでには至らなかった。
番組の中では、政府が「処理水について知っている人が広報後に増えた」というデータを発表したことを受けて、出演した識者からは「なんとなく知っている人が増えることで、知っている人が増えたと捉えるのは危うい」という趣旨の発言があった。
私も同感だった。「処理水」という言葉が、CMや広報誌などで取り上げられ、「聞いたことがある」という人は増えたのだろうが、そこから先に踏み込んで考える人が一体どれだけいるのだろうか、ということである。
地元のメディアとしては、タンクがいつかは満杯になるのが分かっていたのに、早い段階からこの問題について声を上げることが出来なかったことに後悔の念があった。もっと早く、地元と政府・東電で協議を重ねていれば、他の解決方法も模索できたのかもしれないと感じた。
結果的に処理水については、放出開始後に福島の水産物を応援するようなムードも少し感じられ、これまでに大きな問題は起きていないと認識している。ただ、それはこれまで東京電力が処理水放出に関しては大きなトラブルを起こしていない、という事実が大きいと思う。
もしも、希釈されていない処理前の汚染水が海に放出されるようなトラブルが起きてしまう事態になれば、これまで積み上げてきたことはすべて水の泡になってしまう。東京電力には「ミスは一度もできない」という緊張感をもって、処理水の放出にあたってほしいと思う。














