復興へ向け「ダークツーリズム」の検討時期か
福島第一原発には、880トンもの溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」が残っていると推計されている。しかし、2024年から2回行われた試験的な取り出しはわずか0.88グラムで「耳かき1杯分程度」。関連する工程は東電のロードマップが発表されるたびに遅れ、当初から「30年~40年」としている廃炉作業の完了がいつになるのかは全く見通しが立っていない。
原発周辺の復興・産業振興について、政府は「イノベーションコースト構想」や「福島国際研究教育機構」といった復興政策を打ち出してはいるが、成功するかどうかは不透明で、言葉だけが踊っているような印象だ。
個人的には、原発事故直後は不謹慎とも言われていた「ダークツーリズム」=「福島第一原発の観光地化」も選択肢として実現可能なのか、そろそろ本格的に検討を始めて良いのではないかと考えている。
現在、県は避難区域や津波被災地などを含めた「ホープツーリズム」を推し進めていて、2024年度は1万9千人以上が訪れている。実は福島第一原発はメディアや行政・研究機関に限らず、国内外から一般の視察も受け入れているが、案内役の東京電力社員などのマンパワーに限りがあるため、多くの人数を受け入れることができず、一般の方にとってはなかなか生で見ることはできない状況だ。
2012年に取材で入ったときは防護服に全面マスク着用が必要だった。その頃から比べれば敷地内の放射線量など作業環境は飛躍的に改善している。一般の人に間近で安全に見てもらう仕組みができれば、直接的な「廃炉作業」だけでなく、「観光」という産業も生み出せるのではないだろうか。もちろん、住民の理解を得ることは大前提だ。
今後も“被災地のメディア”として
筆者は3月11日には福島第一原発1・2号機の目の前から生中継をする予定だが、防護服や全面マスクも不要なので軽装で中継をする予定だ。一昨年、去年と視察をする機会があったので短期間で3度目の入域となる。原発の目の前から今伝えられることを精一杯、福島の人間として語りたいと考えている。
最初の話に戻るが、いろいろ思いを巡らせていると、「3.11に何を伝えるのか」はやはり難しい問題である。今後も毎年、頭を悩ませることは間違いないと思う。最適解の無い問題だと分かりながらも、被災地のメディアとして真摯に向き合っていきたい。
〈執筆者略歴〉
渡邊 文嘉(わたなべ・ぶんか)
2003年 報道部アナウンサーとしてTUF(テレビユー福島)入社。
福島県警社会記者クラブ、福島県政記者クラブなど担当。
2010年の制作部を経て、2011年から報道部。
夕方ニュースのMC・デスク等担当後、2023年から報道部長。
2026年3月から新設のアナウンス部長(現職)。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














