アメリカとアルゼンチンの蜜月

こうした地理的条件に、アルゼンチンの政治的転換も重なった。

2023年に就任したハビエル・ミレイ大統領は、外交方針を大きく転換した。前政権が進めていた中国やBRICSとの関係強化から距離を置き、アメリカとの連携を外交の中心に据えたのである。

中国は、アルゼンチンにとって重要な経済パートナーであり、特にインフラ投資での存在感は非常に大きい。しかしミレイ政権は、中国企業による重要インフラへの関与に慎重姿勢を示し、防衛・資源分野ではアメリカとの協調姿勢を示している。

米国は経済支援などでミレイ大統領を支えている

一方、トランプ大統領は第2次政権で、西半球の戦略的重要性を前面に打ち出している。移民や麻薬問題だけでなく、安全保障と資源供給の観点から地域への関与を強めている。

マーティン教授は次のように指摘する。

「アメリカは、アルゼンチンのような国が北京ではなくワシントン寄りにとどまることを重視している。パナマで中国企業の排除に動いたように、アルゼンチンとの関係強化も地域の覇権争いの側面がある。少なくともアルゼンチン海軍との協力拡大は既定路線とみられていて、ウシュアイアの基地に興味を示すことは驚くようなことではない」

今回のアメリカの与党・共和党の上院議員をトップとする議員団の視察は事前通告がなく、アルゼンチンの野党は政府に説明を求める事態となっている。

現地メディアによると、議員団は米軍機でウシュアイアに入ったという。私たちは現場を訪れたアメリカの共和党議員に取材を申し込んだが、これまでのところ返答はない。アメリカ大使館は訪問の目的を「環境問題の視察」などと説明している。

さらに、アルゼンチンの地元ジャーナリストに話を聞くと、「アメリカの興味が海軍基地にあるのは公然の秘密。漁師たちは、米軍が展開することで漁業できなくなったり生活が制限されたりすることを恐れている。ミレイ大統領は、自分の利益のために基地をアメリカに差しだそうとしているという批判の声もあがっている」と教えてくれた。

マーティン教授によれば、フォークランド紛争を経験したアルゼンチンの世論は、外国の軍隊に対する警戒感が強く、今後、この海軍基地が大きな政治問題となる可能性もあるという。