自分の本より師の全集、常識外れの「9回校正」

「『藤澤清造全集』内容見本」ほか ミニ展示の一部

西村さんが自身の作品以上に情熱を注いだのが、師・藤澤清造の著作だった。

通常、本の表紙の色校正は初校、再校、多くても3校程度で校了する。しかし、西村さんは「藤沢清造短編集」の表紙を9度直した。

色校正でコート紙に4色印刷したものが、事前にプリンターで出力した色見本より発色が悪かったのだ。実際、プリンターの方が発色が良く、コート紙では再現できない色だった。

KADOKAWA 山田剛史さん
「7校まで行った時に、『(色見本の通りに)出せっていってんだろう』って恫喝されて。8校まで行っても色見本の通りには出なくて、9校を出したら『9校よりは8校の方がマシだった』と。」

西村賢太自筆原稿「清造師事の原点」(「石川近代文学館ニュース第28号」のために書かれたもの)

西村さんは自分の作品よりも、師の本に対して完璧を追求した。

KADOKAWA 山田剛史さん
「賢太さん、自分の本だったらそこまで言わなかったと思うんです。でも、藤沢清造の本だから、もう一部の隙があってもいけないということで。」