■ネットいじめ増加・いじめはますます見えにくく

いじめの認知件数が15.6%減った一方で気になるのは、ネットいじめ(SNSいじめ)の増加だ。コロナ禍で物理的な接触は減ったものの、ネット上での接触が相対的に増加、その中で様々なトラブルが発生しているとみられる。

「パソコンや携帯電話などで、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」の件数は1万8870件、6年前の2014(平成26)年から増え続けていて、2.4倍になった。しかもこれらは表面化した件数で、氷山の一角なのかもしれない。いじめ認知件数の減少は、物理的な接触が減ったからだけではなく、いじめがネットの世界へ潜り込み、ますます見えにくくなっている=認知しにくくなっているため、という可能性がある。もともといじめは見えにくいものだが、「ネットいじめ」は教員たちにとってはさらに見えづらいやっかいな存在だ。

文科省資料より


東京都町田市の小6女児いじめ自殺でも、タブレット端末が使われていた。チャット機能で「うざい」「きもい」「死んで」などと書き込まれていたという。

亡くなった女児


文科省も「生活環境や行動様式が大きく変化し、発見できていないいじめがある可能性にも考慮し、引き続きいじめの早期発見、積極的な認知、早期対応に取り組んでいくことが重要である」とも指摘し、ネットいじめ増加などへの懸念を示している。

■見えにくい“ネットいじめ”への対応強化を

ネットいじめは、“空間”的には学校の敷地内ではなく、“時間”的には下校後や休日にも頻発しうる。そんなSNS上のいじめをどう早期に認知し、早期に対応するのか。保護者や教職員たちには、難しい課題が突きつけられている。ただでさえ多忙な教員たちからは困惑の声が次々とあがっている。「SNSいじめへの具体的な対応策が思い浮かばない」、「学校内での友人関係がベースになっているとはいえ、広がりすぎた子どもたちのコミュニティの全てを見回るのは不可能」、「閉鎖的なアカウントで行われれば、ネットパトロールにも引っかからず見つけ出しにくい」など。

確かに、複数のTwitterアカウントをもつ子どもも少なくない。匿名や仮名のやりとりまで把握するには無理があり、パスワードで守られたやりとりはチェックすることさえできない。では、どうしたらいいのか。専門家は「それでも大人(教職員や保護者)たちは、ネットいじめで傷ついた子どもたちの日常の“変化”に気づくことはできるはずだ」と言う。また、日常の学校生活や家庭の中で、困ったことは“困った”、イヤなことは“イヤだ”と訴えやすい環境づくりも大切だという。

いじめを抑制する上で大切なのは、子どもたちが大多数の“傍観者”のままでいるのではなく、“行動する傍観者”になってもらうことだが、そんな役割を果たす子どもたちを育むための予防教育も大切だ。先の教員の言葉にもあった通り、ネットいじめも「学校内での友人関係がベースになっている」。大人たちよりもネット上でのやりとりに近いゆえ、彼ら“行動する傍観者”の存在がますます重要になる。

今回発表された文科省の調査報告では、自殺した小中高校生は415人にもなり、調査開始以来最多となったことも衝撃を与えた。前の年の317人から100人近く増えた。「うつ病など病気の悩み・影響」が増えているのが特徴で、文科省の協力者会議はコロナ禍で両親のステイホームが増えたことなどで家庭環境が変わったことが影響したのではないかと分析している。そして、小中学校における不登校の児童・生徒も19万6127人と前の年から8.2%増えた。

コロナ禍による子どもたちのストレスは大きい。人と人との距離が広がる中、不安や悩みを相談しにくくなった子どもたちがいる。子どもたちの不安や悩みが従来とは異なる形で現れたり、それらを子どもたちが一人で抱え込んだりするケースもある。そのことがネットいじめや、不登校・うつ、そして自殺にもつながっている。今後も一層の目配りと心配りが必要だ。