選手の声―若くして競技を離れる決断

なかには競技の先の人生を見据え、早期の引退を決めたアスリートもいる。

元体操日本代表で、2024年11月に20歳の若さで引退した畠田千愛さん。現在は早稲田大学に通う3年生だ。

2023年の世界選手権日本代表メンバーであり、大学2年生で迎えたパリ五輪では補欠メンバーとして名を連ね、トップアスリートとして体操界を引っ張ってきた。

体操界では日本代表レベルの選手が、大学卒業など学生生活の節目に区切りをつけて引退するケースが多い中、大学2年生での引退は異例だった。

元体操日本代表・畠田千愛さん
「私の場合、パリの補欠も入っていましたし、成績も安定していました。とにかく『なんで?』と言われることが多かったです」

なぜこのタイミングで引退を決断したのか。

畠田千愛さん
「一番は引退後のキャリアへの不安でした。私は家族全員が体操の指導者ですし、小さいころから一緒に練習してきた先輩方も引退後に指導者になるケースが多かった。

でも私はそうではない道に進みたいと思った時に、残りの学生期間は体操以外の世界でもっと勉強したいと考えました」

体操を辞めたことへの後悔は一度もないという。

畠田千愛さん
「全く悔いはない。正直、競技のことは一切頭になかったです。でもそれは体操が嫌いだったとかではなく、すぐに今後どうするかで頭がいっぱいだったからだと思います」

畠田さんは、競技人生に区切りをつけると同時に、次の人生をどう歩むのかを主体的に考え始めていたようだ。

現在は大学に通いながら就職活動を行い、講演会などにも積極的に取り組んでいる。

畠田千愛さん
「競技中は本当に休みが少なくて、体操漬けの日々だったので、就活を通して、世の中のことを何も知らずに生きてきたんだなと痛感しました。ひとつのことに打ち込んできた強みがある一方で、失ったものも多かったんだなと感じて、最初はすごく落ち込みました。

今はまだ明確にやりたいことが決まってるわけではないんですが、大学の友人や他競技の選手、先輩などと関わりながら、勉強して、やりたいことが見つかった時に選択肢を増やせるような時間を過ごしたいと思っています」

早く引退を決断した背景には、知らなかった世界に目を向け、競技の先の人生を、自らで描こうとする21歳の覚悟があった。