“山の妖精”は特徴を生かせる5区に

小林の加入でSUBARUの区間配置に厚みが出た。これまで最長区間を担ってきた清水歓太が3区に回ることができた。清水自身は年間を通してマラソンを意識した練習を行っているが、それでも11月末のNITTAIDAI Challenge Games10000mで27分47秒13の好記録で走っている。

「そこまでの練習はしない中で出た記録。その後も疲労が出ず、12月の練習も順調です。3区のスピードに不安もありますが、強い選手が後ろから来たら一緒に行ける。後半6kmが勝負ですが、スタミナ面は研いてきたので自信があります」

山本唯翔を前回の3区から5区に回せたことも、小林加入の効果といえる。山本は城西大では箱根駅伝山登りの5区で区間賞を取り、“山の妖精”と言われた選手。「入社時から5区を希望していました。ここで決まるケースもあるし、(群馬県太田市にはSUBARU本社があり)SUBARUへの応援が一番多い。群馬の皆さん、太田の皆さんに勇気を与える走りをしたい」

7区の並木寧音は、2年目だが主将を任された。前回も7区で区間4位。2人を抜いて5位でフィニッシュした。「去年は30秒差があった前の集団に追いつきました。今年はトップのチームに20秒差があっても追いつきたい。残り400m、300m、200mのポイントは頭に入っています。(最後のスパート力は)実業団でトラック中心に練習したら、自然とついて
きました」

駅伝でタイムを縮めることにおいては、三浦以外の選手たちの力が大きい。だがチームの精神的な部分ではやはり、“世界の三浦”が大きく影響している。三浦の世界陸上はチームで国立競技場のスタンドから応援した。

「あと一歩でメダルを取れるところまで行きました。チームメイトが世界とあれだけ戦える。自分はニューイヤー駅伝で、三浦の世界陸上みたいな結果を出したいと思いました」(小林)

「感動的でした。国立競技場で観戦した全員が、三浦に魅了されていることが空気でわかりました。駅伝であそこまでの走りをするのは簡単ではありませんが、目指さないといけない」(清水)

三浦が地元世界陸上でやってみせたことを、地元チームであるSUBARUがニューイヤー駅伝でやろうとしている。

※写真:前回大会の1区で走る三浦選手(2025年1月1日)

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)